約 3,642,951 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2868.html
竹取り男とゆっくり 3 (竹取り男とゆっくり・竹取り男とゆっくり 2の続きです) 干からびたまりさから生えた茎には、つごう7つの実がなった。 店で売っているゆっくりは栄養状態が良いため、3時間ほどでいくつか収穫できる大きさに育つらしい。 そこまで育つまでの時間、男は店主からゆっくりの生態などについて詳しく聞かされていた。 「悪い。売り物のありす、思わず潰しちまった」 「かまいませんよ、もともと私が無理にお見せしたものですから」 店主はニコニコと笑いながら言った。 「それより、まだ未熟ですがそろそろ収穫しましょうか」 茎にぶらさがった赤ゆっくりは大きく育ってはきたものの、まだ成長途中で眠っている。 店主が茎を握ると、朽ち果てたまりさの体がボロボロとこぼれ落ちる。 「茎と実に餡子を取られて、親は乾燥して粉になってしまうんですよ」 茎についた実は、おおっていた緑色の薄皮がそり返って、中の赤ちゃんが寝顔を見せていた。 茎の先からまりさ、ありす、ありす、ありす、ありす、まりさ、ありす。 ありす多いなあ…(汗) 一番先の赤まりさはプチトマトほどの大きさで、根元のほうの赤ありすは小指の爪ほどの大きさ。 みんなまだぐっすりと眠っていたが、店主が長女のゆっくりまりさの赤ちゃんの顔をペチペチ叩くと、赤まりさは目を覚ました。 「ゅ…ゅぅぅ………むにゅ」 また寝た。 「眠ってやがる…。早すぎたんだ」 「いえ、ゆっくりどもは寝てばかりいましてな」 と言うなり、店主は茎をグルグルと水平に回した。 7匹の赤ゆっくりは茎にくっついたままグルグルと激しく回転して、一番先の大きいのから順番に目を覚ましていった。 「ゅゅっ!? …きもちわゆいよぉ!」 「ゅ? ゅ? ゅ?」 「…っ…… ゅぐっ…」 「ゅーっ…ゅーっ…」 「………!」 「ゅ……」 「…………」 小さすぎる奴らは何言ってるか聞こえなかったが、7匹全部が目覚めるのを確認すると、店主は揺らすのをやめて優しそうな笑顔で話しかけた。 「赤ちゃんたち、ゆっくりしていってね」 餡子脳に刻みこまれた本能は、こんな状況下でも条件反射をやめられないようだ。 「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」」」 ある程度成長した3匹の赤ゆっくりは、一斉にあいさつを返した。 「……ゅ……」 4番目の赤ありすはまだ目をつむったままだ……と思っていたら、 「ぷぇ」 と小さなうめき声を上げて半開きの口から水っぽい餡子を吐き出すと、 「ゅぅ…ゅぅ…ゅぅ……」 と、もがき苦しんでいた。 茎の根に近い残り3匹の極小赤ゆっくりも一斉に餡子を吐き、こちらはすぐに死んでしまった。 たったあれだけの回転でも、未熟児たちにとっては致命傷になったようだ。 「まりちゃのいもーちょ! ゆっくちしちぇ…………ゆ!? ま、まりちゃのいもーちょぎゃぁぁぁ!!」 「どぽちてえぇぇぇっ!?」 「だりぇか、あいちゅのいもーちょをゆっくちたちゅけちぇにぇ!」 赤まりさと2匹の赤ありすは、隣の妹たちに気がついて助けを求めた。 「赤ちゃんたち、そんなに騒いで、ゆっくりしたくないのかい?」 相変わらずの調子で話しかける店主。 「ゆっくちしちゃいよぉ! でもゆっくちできにゃいよぉ!!」 「ゆえーん! おきゃーしゃーん! どごおぉぉぉ!?」」 「おじしゃんたちっ、ゆっくちしてにゃいでたちゅけちぇにぇ!!」 「うんうん、でもそろそろおなかがすいたんじゃないかな? おまんまは欲しくないかい?」 「ゆっ!? おまんまほちー!! おじしゃん、はやくおまんまもっちぇきちぇにぇ! しょしたら、いもーちょたしゅけちぇにぇ!」 「おにゃか…しゅいたよぉ…」 「おいちーおまんま、おいちーおまんま!」 …おまんまと聞いて、妹たちのことなど頭から消し飛んだようだ。 赤ゆっくりたちは待ちきれないといった様子でおまんまの合唱を始めた。 「じゃあ赤ちゃんたち、下におりようね」 店主は3匹の赤ゆっくりを順番に茎からもぎると、座布団の上に置いた。 「ゆゆ!? ふかふか〜! しゅごくゆっくちできりゅよ!」 「ゆ〜♪ あっちゃかいにぇ!」 長女のまりさと次女のありすは座布団がいたく気に入ったらしく、頬をこすりつけたりポヨンポヨンと飛びはねている。 「ゆ! ここをまりちゃのゆっくちぽいんとにしゅりゅよ! ここでじゅ〜っとゆっくちしゅりゅよ!」 「ゆっくちー!」 座布団の気持ちよさに、妹の救助だけでなく今度はおまんまのことまで頭から消し飛んだらしい。 生まれたばかりとはいえ、さっそく見事な餡子脳ぶりを見せてくれる。 「おいちーおまんま! おいちーおまんま!」 だが、3番目の妹の催促で、姉たちはおまんまのことを思い出して一緒に催促を始める。 「ゆっ!! はやくまりちゃにおまんまもっちぇこなきゃだめだよ!」 「はやくちょーだいにぇ! あいちゅをゆっくちさせちぇにぇ!」 もはや4匹の妹のことなど忘却の彼方のようだ。 「はやくちてよ! にゃにぐぢゅぐぢゅちてるの!? ぷんぷん!」 「ちょかいはのあいちゅに、しちゅれーなこちょちないでよにぇ!!」 「おまんま! おまんまぁ!!」 店主を指図する赤ゆっくり。 とはいえ、店主とてゆっくりを扱って十数年のプロだ。 赤ゆっくりに見えないように、虫の息の4番目の赤ありすを茎からもぎると、カチューシャをはずして顔を座布団に埋めるように置いた。 「はいはい。さ、みんなの大好きな"あまあま"だよ」 「ゆーっ! いいにおい〜♪」 「ゆっくちたべりゅよ!」 「あみゃあみゃー」 3匹は髪飾りもなく顔も見えない妹ありすに飛びはねて近づくと、まずは長女のまりさが大きな口を開けて後頭部に噛みついた。 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」 一口で体の半分近くを噛みちぎられた赤ありすは、それがトドメになったのだろう…一瞬ビクンと痙攣して、その生涯を終えた。 「おにぇーちゃんばっかりじゅりゅいよ! あいちゅにもゆっくちちょーだい!」 「ちょーだい? ちょーだい?」 あまあまを一人占めする姉まりさに、2匹の妹ありすたちが文句を言いはじめる。 「なにいってりゅの? まりちゃがさいしょにみちゅけたんだもん、これはまりちゃのものだよ。ありちゅたちはゆっくちりかいちてね!」 「どぽちてしょんなことゆーのぉ!? あいちゅにもちょーだいよぉぉぉ!!」 「あみゃあみゃちょーだあい!!」 あまあまに覆いかぶさって一人占めするまりさと、おなかがすいて泣き出すありすたち。 賢い親がいれば姉妹で分け合うことの大切さを教えてもらえるのだろうが、それはもう望めないことだった。 ましてあのレイパーありすを親にもったこの子供たちに、分け合うことなど期待できるはずもない。 自分のもの宣言を終えたまりさは、再びあまあまを食べようと大きな口をガパーっと開いた。 店主はそれを見ると、半分になった赤ありすをさっとよけた。 「かぷん! ………ゆゆ!? おじしゃんなにしゅりゅの!? まりちゃのあまあま、ゆっくちかえしちぇにぇ!」 空気に噛みついた赤まりさは、またもや「ぷんぷん!」を繰り返しながらカスタードを追いかけてきた。 「ねえ赤ちゃん、これは赤ちゃんと同じ"ゆっくり"なんだけど、食べちゃっていいの?」 「なにいってりゅの? しょれはあまあまだよ! ばかなこというおじしゃんはゆっくちちんでね!!」 「でもほら、これ髪の毛だよね? 中身もカスタードだし、ゆっくりありすなんじゃないかなぁ?」 「うるちゃいよ! ちね! あまあまかえちて、ゆっくちちね! ゆっくちちね!!」 なにしろ、食べることに貪欲なゆっくりだ。 赤まりさは何度も「ちね!」を繰り返しながら、店主の指につままれている妹ありすをしつこく追いかけてきた。 「じゃあほら、よく見てごらん」 ここで初めて、下向きにしていた赤ありすの顔を、追ってくる赤まりさに見せる店主。 赤まりさは、追っていたあまあまが舌を垂らしたまま苦悶の表情で絶命している赤ありすに変わったことに驚いて飛び上がった。 その驚いた顔があまりにも滑稽で、男はぷっと吹きだしてしまう。 「ほら、顔があるよ? やっぱりゆっくりありすじゃないか」 「ゆゆ!? ……ちらにゃいよ。まりちゃ、こんなありしゅなんてたべてにゃいよ!」 口では自分が同族を食べていたことを認めようとしない赤まりさ。 だが、急にぷるぷると震え出したのを見れば、同族を食べたと理解しているのは明らかだった。 「それから君が食べたありすって、君の妹だよね? ちょっとこれを見てごらんよ」 店主は茎をまりさたちに見せた。 「ここが君たち3匹がいたスペース。こっちに付いてるのは死んじゃった3匹で、ほら……真ん中にいたはずのありすがどこにもいないよね? やっぱりこのいなくなった妹のありすって、君が食べたありすだと思うよ?」 茎を指差してひとつずつ確かめていく店主の指を、食い入るように見つめる赤ちゃん。 「ち…ちらないよ…。しょれに、おかざりがないもん…。いもーちょのありしゅとはちがうよ……」 このありすにはカチューシャがないから…と、この期に及んで否定しつづける赤まりさだが、明らかに動揺している。 カタカタと鳴っているのは、ぴったりと身を寄せ合って怯えている赤ありすの歯の音だ。 「お飾り? ……あ! こんなところに何か落ちてる! これ、ちょっとこのありすに結んでみようか」 店主が後ろのほうから出した赤いカチューシャを見て、赤まりさは絶望した。 店主の無慈悲な尋問が、妹を食べた事実をゆっくりと確定していく。 「よし、結べた。どうだい? 君たちの妹のありすじゃないかい?」 店主は可愛らしいカチューシャを結んだ赤ありすを手のひらに乗せて、2匹のありすに特によく見せた。 「あ…ああ……あいちゅのいもーちょだよぉ………」 すぐ隣で生まれた三女の赤ありすが、間違いないと念を押した。 次女の赤ありすは、目の前に迫った妹の死体を見て、さらにブルブルと震えた。 店主はわざとらしく大きなため息をつくと、赤まりさに向かって言った。 「そうか。じゃあやっぱり君は妹を食べたんだね? 自分と餡子を分け合って生まれた妹のありすを…食欲にまかせて食べちゃったんだね? ……こんのゆっくり殺しが!!」 「ゆえーん! おにぇーちゃんのゆっくちごろち!! おにぇーちゃんなんかゆっくちちんじゃえ!!」 「こわいよぉ〜!! あっちいってよぉこのゆっくちごろち!!」 店主に加えて、妹からも"ゆっくり殺し"と罵倒される赤まりさ。 「ち…ちらなかったんだよぉ…。だりぇか、まりちゃをゆっくちゆるちてぇ……」 「知らなかったで済むわけないじゃないか。君は食べちゃったんだよ妹を。美味しくいただいちゃったんだよ、妹を。 『むーしゃむーしゃ、しあわせ〜』なんて言いながら、欲望のままに貪り喰っちまったんだよ、可愛い可愛いイ・モ・ウ・ト・を」 店主は噛んで含めるように告げると、死んだ赤ありすの体をゆっくりと後ろ向きにした。 赤ありすの後頭部には、赤まりさに食い破られていまだカスタードのしたたる生々しい傷跡が残っていた。 赤まりさが恐怖に固まったのを見た店主は、トドメとばかりに、手の上の赤ありすの死体を左右からギュッと潰した。 プチャァァ! 押されて飛び出した残りのカスタードが、赤まりさに飛び散って全身カスタードまみれにした。 「ゆぎゃーーーーーーーーーッ!!」 ゆっくりたちからすれば、彼らの内臓にあたるカスタード。 そのカスタードを全身に浴びた赤まりさは、ネットリとした感触とむせ返るような匂いにひっくり返って失神してしまった。 「ゆぶぶぶぶぶぶぶ」 「ゅっ…ゅっ…」 後ろで見ていた2匹の赤ありすたちもまた、泡の混ざった餡子汁を噴きながらひっくり返って失神してしまった。 「…………」 これまでの喧騒が嘘のように、シーンと静まりかえった室内。 店主は嬉しそうに失神した3匹の子ゆっくりを手のひらに乗せると、男に差し出した。 「たっぷり恐怖を味わった赤ゆっくりは絶品ですよ?」 男は店主の笑顔が恐ろしくなってきた。 こいつを敵に回してはいけない…そう本能が告げてきたので、無言で赤ありすをつまむ。 餡子が一番好きなのだが、昨日の成体まりさといいこの赤まりさといい、どうもまりさ種は食べたいという気が起こらないのだ。 パクッ 「ウマー」 風味豊かで、濃厚な甘み。 輝く黄金のような光沢を放つカスタードは、一流のパティシエ〜が作った最高級品にも劣らない味わい深さを持っていた。 歯ですり潰す瞬間に「ゅっ!」とか小さく悲鳴を上げるのもまた一興だった。 「さ、餡子のほうもご賞味ください」 男は促されるままに赤まりさをつまむと、この種族を憂鬱に思っていたことも忘れて、足から頭に向かってパックリと割った。 「んゆ!? ……ゆぎえぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」 真っ二つにされた激痛で目を覚ました赤まりさは、この世のものとも思えない叫び声を上げた。 つい昨日まで耳障りだと思っていたゆっくりの絶叫が、男はだんだん心地よく感じられてきた。 「いぢゃいよお!!! どぽちてごんなごどじゅるのお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!!!」 赤まりさの悲鳴などおかまいなし。男は中の餡子に釘付けになっていた。 今にも湯気が立ちのぼりそうな、ホクホクとしたやわらかい餡子。 ちょうどよい薄い皮。 当たり前だが、生きもいい。 赤ゆっくりがジタバタするたびに、皮の底の餡子が躍動して、皮がピョコピョコと動いている。 赤ゆっくりの踊り食いだ。 男は先に後頭部のほうから口に放り込んだ。 「ウマママ!!」 「あ゙あ゙っっ……やべでぇ!! ゆっぐぢざぜでぇ!!! 」 目の前で自分の体の半分を食べられた赤まりさ。 今度は顔のほうとばかりに、男は涙やら涎やら餡子汁やらでぐしゃぐしゃに泣いている赤まりさと目を合わせた。 「まりぢゃのおかおはおいぢぐないよぉ!!おにぇがいだかりゃ、ゆっぐちにがちてぇぇぇ……」 「ゆっくりしたいのかい?」 唐突に、横から店主が赤まりさに話しかけてきた。 「ゆぐっ…! ゆっぐちちたいよぉ……ゆっぐぢちたいよぉ……」 「でも、君は妹をゆっくりさせてあげなかったよね?」 「ゆ…ゆ…ゆっくぢはんせい…ちてるよ…………まりちゃ…ちにたく…にゃ……」 赤まりさの声がだんだんかすれてきた。 そろそろ限界のようだ。 うわごとのように「ゆっくりしたい」を繰り返しているが、もしここで放されても死ぬことは目に見えている。 「そうか、ゆっくりしたいのか」 「ゆ…ゆ…」 「じゃあ、君の妹に聞いてみよう。 …まりさに食べられちゃったありすちゃん、まりさのこと許してあげるかい?」 「ゆ る さ な い」 「ぴきゅっ!!!!????」 怨念のこもった妹の声。 朦朧とした視界全体には、自分が食べて殺した妹のデスマスクがドアップで飛び込んでくる。 今にも死にそうだった赤まりさは、あまりの恐怖に男の手の中で一度飛びはねてから、両目を見開いたままショック死した。 ……ゆっくりの声色を真似して「ゆるさない」とか、いい大人が何してるんだか。 「最後のトッピングですよ」 店主は邪魔したことを詫びながら言った。 男が赤まりさを口に放りこむ。 「ウマママママ!!!」 なんと、あれほど美味しかった後頭部よりも、さらにさらに美味しくなっていた。 すばらしい風味が口いっぱいに広がる。 ほっぺたが落ちるとはこのことだ。 * * * 「まりさ種以外ですか?」 お茶を飲んで一息ついた男は、店主と向かい合って座って商談をしていた。 結局、男はもう一度ゆっくり饅頭を自宅で作ることに決めた。 返しにきたれいむはまた持って帰るとして、つがいにするためのゆっくりを一匹買わなければならない。 だが、どうしてもあのまりさ種だけは育てる自身がなかった。 ありす種も、あのレイパー魂で毎日「んほおおおおお!」とかやられてはたまらない。 「他ならなんでもいい。たとえば、あのれいむってヤツをもう1匹とか」 「同種を掛け合わせてもあまり美味しくならないし、奇形ゆっくりが生まれることがあるんです」 「なら、他には?」 まりさ種もありす種もイヤ。 困ったお客さんだ…と嘆息したが、商魂たくましい店主はおくびにも出さなかった。 「無いこともありませんが、希少種なので多少お値段が張ってしまいますよ…?」 「いくらだ?」 結局、男は昨日と今日の二日間、竹を売って手にした金額の半分の額を代金として、新しいゆっくりを買って帰り道を歩いていた。 荷車の上でれいむと一緒にケースに入っているのは、色白の肌の、紫色の髪をしたゆっくりだった。 触れば「むきゅ!」、持ち上げれば「むきゅ!」、目が合っただけで「むきゅ!」と鳴くこのゆっくりは"ぱちゅりー"というらしい。 ゆーゆー鳴かない種は珍しく、また比較的おとなしいので、男はすぐに気に入った。 壊れたケースもサービスとして、新品に替えてもらった。 「明日から繁殖させて、毎日美味しいゆっくり饅頭を食べよう…!」 すでに夜も更けていたが、男はウキウキしながら夜道を歩いた。 1匹の野良ゆっくりれいむが、そんな男と荷台のケースを見ながら、ゆっくりと首をかしげていた。 つづく ~あとがき~ キリのいいトコまで終わりました。 まぁおもしれえかな…って思ってくれたら、 何がしかスレに感想くれたら嬉しいっす。 アク禁のストレスをゆっくりにぶつけてみたら、 意外と書けるもんだわね。 じゃね~。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/339.html
ゆっくりのほっぺたを突っつきたい。 仕事場では品行方正、真面目で優秀と、何だか意味が重複している様な評判高いオレだが、年に一度、必ず今の時期だけはずっとゆっくりのほっぺたを突っつきたくなる。 まぁ、ちょっとした病気みたいなものだ。 「すいませーん」 「あぁ、君か……ん、もうこんな時期なんだな。分かった、休みを取っておこう」 「ありがとうございます」 毎年この時期だけという事で、特に問題もなく休みが取れる。 キチンと仕事している者の特権とでも言っておくべきかな。……ごめん、ちょっと調子に乗った。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 呼び声に答えて現れたのは、成体とは言えないがそこそこに育ったゆっくりまりさ。 ――うん、これ位が突っつきがいあるんだよな。 「ちょっといいかな、頼みがあるんだけど……」 「ゆっ? たのみってなに?」 変な事でもされるのかと疑っているのか、警戒しだすゆっくり。 突っつくのは変な事と言えるかもしれないが、別に危害を加えるワケじゃない。オレは安心させるために、ちょっと距離を開けた。 「別に変な事を頼みたいワケじゃないんだ、ただ、ちょっとほっぺを突っつかせてもらえないかなぁ……と」 オレの言葉がよっぽど不思議だったのか、小首を傾げる様な仕草をして、不思議そうに聞いてくるゆっくり。 「ゆ? まりさのほっぺを突っつきたいの? なんで?」 理由を聞かれるのは毎回の事なので、スラスラと言葉が出てくる。 「君たちはとても柔らかいだろう? だから、突っつくととてもゆっくり出来るんだ。食事もゆっくり出来るスペースも全部お兄さんが用意するから、お兄さんの家でゆっくりしていかないかな?」 「ごはんもゆっくりポイントもつくってくれるの!? まりさいく! すきなだけまりさのほっぺをつっついてゆっくりしてね!!!」 飯と場所を用意するという条件に惹かれたらしく、はやくはやくと、ゆっくりらしからぬ速さで行く事を了解するゆっくりまりさ。 ――妙な事をするつもりはないけど、これだけゆっくりを安心させられるなら苛める事も出来るだろうな。 まぁ、思うだけで現実にはやらない。ほっぺを突っついている方がよほど楽しいからだ。 オレは苦笑いを浮かべつつ、ゆっくりと後を追いかけていった。 オレは今、つんつんとゆっくりのほっぺたを突っつき続けている。 あまりに楽しいので、食事もロクに摂らず、もう一週間近く突っつき続けている。 もちろん、食事を摂っていないのはオレだけだ。ゆっくりにはたっぷりと飯を与えている。 ただし、ほっぺたを突っつきながらの食事なので、食べ難い事この上ないだろうが、最初にそれは約束したのだから我慢してもらう。 「……ゆ……やめ……」 ゆっくりが何か頼む様な声を上げたが、これは正当な報酬なのだから無視して突っつき続ける。 「……たべもの……ゆっくり……させて……」 更に突っつき続ける。 「おねがい……たすけて……ゆっくり……」 突っつき続ける。 「もう……ころして……いや……」 突っつき続ける。 「ゆっくり……ゆ、ふふふふふ……」 くすぐったいのか、それとも何か楽しい事でもあったのかは分からないが、笑い始めた。 だがそんな事は無視して突っつき続ける。 「ふふふふふふふふふふ……」 「柔らかいなぁ、良い感触だなぁ……」 壊れた記憶装置の様に平坦な笑い声をあげるゆっくりを気にせず、オレはずっと突っつき続けていた。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4376.html
※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』15 その日は特別暑い日だった。 私は疲れ果てていたが、ゆっくりに囲まれて歌わされていた。 無理に笑顔を作り、リズムをとって声を絞り出す。 「ゆっゆっゆ~……ゆ~ゆ~ゆゆゆ~……」 「ゆゆっ、ぜんぜんだめだよ!!やるきあるの!?」 「にんげんさんはほんとうにゆっくりできないわ、むきゅ!」 その時、突然、上空で物音がした。 バシュウウウ、となにかが吹き出すような音。 上を見ると、穴の口から見える空が、薄いピンク色の霧に包まれている。 「ゆゆっ!?なんなの!?ゆっくりできるもの!?」 「けむりさんはゆっくりしていってね!!」 ゆっくり達はしばらくうろたえていたが、やがて弛緩して地面に横たわり始めた。 「ゆゆぅぅ~~~……なんだかとってもゆっくりできるよ……」 「ゆゆゆぅ……ゆっくりしていってね……」 「ゆっくりするよぉぉ~~………」 だらしなく顔をゆるめ、地面に延びるゆっくり達。 声をかけてみても、ゆっくりするのに夢中といった様子で無反応だ。 しばらくしてから、ヘリコプターの音が聞こえてきた。 待っていると、果たして人間の姿が見えた。 「圭一さん!須藤さん!」 渇望していた人間の声だった。 あの施設の男たちらしい。 あれほど見つかるまいとしていた相手に対して、私はうれし涙を浮かべて声を返した。 「助けて!!助けてーっ!!」 すぐに縄梯子が垂らされた。 「圭一さん、来たわ!助けが来たのよ!!」 「ああ」 長浜圭一はさして感動もない様子で頷いた。 「大丈夫?登れる?」 「左足だけでも充分登れるさ」 長浜圭一を先に行かせ、尻を押してやる。 彼が無事に上がったのを確認すると、私も続いて梯子を登っていった。 「ゆっくりぃぃ~~~……」 「ゆっくり………ゆっくり………」 「ゆふぅ……ゆふぅ………」 地上に上がると、全てのゆっくり達が弛緩して地面に広がっていた。 どれもが究極のリラックスといった表情で、侵入者の人間たちを前にしてさえ反応しない。 ドスまりささえ弛緩してだらしなく広がり、その下に数匹のゆっくりを下敷きにしているが気づいていない。 十何メートル離れた草地にヘリコプターが止められており、 十数人のスタッフが集まって何事か準備している。 縄梯子を垂らしてくれた二、三人の男たちに聞いた。 「これは……何をしたの?」 「『ゆっくりオーラ』ですよ。 ドスゆっくりが常に微量のゆっくりオーラを放っていて、 周囲のゆっくりをゆっくりさせていることはご存じかと思います。 そのゆっくりオーラの成分を凝縮して強化し、さらにゆっくり以外に効力が現れないように合成したものを、 ガス爆弾にして上空からここに投げ込みました」 「そんなものまで作ったの?」 「いえ、あなたの娘さんの作品ですよ」 「……そう」 ゆっくり研究の第一人者である娘なら、こういうものを作ってもおかしくなかった。 一瞬聞き流しそうになったが、私は思い当たり、聞いてみた。 「そういうものを、娘があなたたちに預けていったの?」 「そうです」 「いつ?」 「出発の直前です」 「出発前って、誰の……?」 男は肩をすくめ、地面に腰を下ろしている長浜圭一のほうを見た。 長浜圭一が言った。 「ああ、もう言ってもいいだろう。あんたがあの施設を出発する前日だよ、須藤さん」 どういうことなのか飲み込めなかった。 混乱する思考がまとまらないままに、私は質問を繰り返した。 「出発………って?どういうこと?娘が……え?」 「あとは娘さんに直接聞いたほうがいい。 おい、博士はどこにいるんだ?」 長浜圭一が男たちに聞くと、ノートパソコンを携えた男が答えた。 「今から突き止めるところです。録画した映像です」 ノートパソコンの画面に映像が表示される。 それはひどく低い視点の映像で、暗い洞窟の中を映していた。 その洞窟の中、正面にいるのは……長浜圭一だった。 視界の隅には私の姿が時々覗いている。 「昨日録画したものです」 言葉を失って凝視しているうちに、視点が変わっていく。 映像は洞窟の中から地上に移り、森の中を縫って進んでいた。 「ありすの映像ですが、この後須藤春奈博士のところへ向かいます。 たどっていきましょう」 ノートパソコンの映像で道筋を確認しながら、長浜圭一が男たちの肩を借りて森の中へと進んでいく。 私はわけもわからず、その後を追った。 「んほおぉぉぉぉ!!おねえさんのまむまむぎもじいいいいぃぃぃ!!!」 「にんげんのおはだとかいはだわぁぁぁ!!んっほおおおぉぉぉぉ!!!」 「んほほほほほほほすっきりいぃぃぃーーーーーーっ!!!」 岩壁に穿たれた自然の洞窟の中に、私の娘はいた。 上半身を露わにして横たわる娘に、何匹ものゆっくりが身をこすりつかせていた。 スカートとパンツの他に何もつけていない春奈の体中がゆっくりの粘液にじっとり濡れている。 一週間もの間、恐らく何も食べていないだろう春奈がゆっくり達の慰みものになっていた。 脳髄に焼けた鉄が詰まったような怒り、いや激怒。 怒りのあまりに声も出せず、私はその洞窟に踏み込んだ。 「ゆゆっ!!にんげんさんだよ!!かってにぬけだしたの!?」 「かってにでちゃだめよ!!ゆっくりできないわね!!」 「れいむがおくってあげるからおうちにかえろうね!!」 順番待ちらしき、入口近くにたむろしていたゆっくり達が私のほうへ跳ねてきた。 その横っ面を力まかせに蹴りつける。 「ゆびぇ!!?」 蹴ったのは一匹のありす種だった。 そのありすは蹴られた勢いで吹っ飛び、洞窟の壁に叩きつけられて潰れ、カスタードをまき散らした。 明確な殺意をもってゆっくりを殺したのは初めてのことだったが、 怒りにかられている今の私は、そのことを意識さえしなかった。 放心状態で呆然としているゆっくり達を無視し、春奈の元にたどり着く。 春奈の体に身をこすりつけているゆっくり達、いや、ゆっくり共はすっきりに夢中で私に気づかないようだった。 「まむまむ!!まむまむ!!にんげんまむまむぎもじいいぃぃぃぃんほほほほほおおおお!!」 そのれいむは、春奈の口にぺにぺにを突っ込んで顎を振っていた。 私に背を向け、全身から粘液を飛び散らせながら一心不乱に顎を振るそのゆっくりの頭には、見慣れた飾りがついている。 私の……私がつけてあげたゴールドバッジ。 「んほっ、んほっほっほっほっヤバヤバヤバイ、イクイクイクイクイクんほっほっほおおおおおーーーーーっ!! でるっ、でるでるでるよおおおおいっぱいでちゃうううぅぅ!! かわいいれいむのおちびちゃんのもとたっぷりのんでねえぇぇぇぇ!!! すっ、すっ、す、すすすすすっっっっきりいいいいいーーーーーーーーーーっ!!?」 れいむは、春奈の口の中に精子餡を流し込むことはできなかった。 射精の瞬間に後頭部を掴まれたれいむは、 私の手に掴み上げられた状態で空中に精子餡をまき散らしている。 「ゆっ!?ゆっ!?ゆゆゆゆゆっ!?ゆっゆっ!?」 「………れいむ。何をしてるのかしら?」 「ゆっ!?すっ、すっきりっ!?ゆううぅ!?れいむじゃないよ!?れいむなの!?ゆっゆゆゆゆゆ」 射精直後の放心状態も手伝って状況がつかめずにいるらしいれいむを、私はそっと地面に下ろした。 下ろされたれいむは、すぐにぷるぷると体を振り、正気を取り戻したようだ。 私のほうに向かって叫びはじめた。 「おねえさんなにしてるのおおおぉぉぉ!? かってにでてきちゃだめでしょおおぉぉぉぉ!!!だれがでてきていいっていったのおおおぉぉぉ!? おねえさんはまだまだゆっくりしてないんだよ!!べんきょうしなきゃいけないんだよぉ!! わかってるの!?わがままもいいかげんにしてねえぇぇぇ!!」 バァン!! 私は靴を脱ぎ、靴の底をれいむの眼前の地面に叩きつけた。 「ゆっ」 れいむは硬直し、私の顔を見上げた。 その表情には、かつての「主」に対する感情が戻り始めていた。 「もう一度聞くわ、れいむ。私の娘に何をしていたの」 「ゆっ………ゆっ…………か、かわ、かわいいれいむをおこらないでね?ゆっくりして」 「答えなさい!!!」 再び靴を地面に叩きつける。 れいむのまむまむからちょろちょろと小便が漏れ始めた。 「ゆ…………ゆ…………ごべ、ごべんなざ……」 「誰が謝れなんて言ったの?何をしてたのかと聞いてるのよ」 「ず、ず、ずずずずずっぎ、ずっぎ………ごべ………ゆるじ、ゆるじでぐだざ……」 「すっき、何!?最後まで言いなさい!!」 「すっ、すっき……すっき……しょ………しょうがないでしょおおおおおおおおおお!!!?」 れいむは逆ギレして叫び始めた。 「これぐらいしかにんげんさんのおしごとがなかったんだよおおぉぉぉ!! かりもできないし!おうちもつくれないし!かわいくないし!ゆっくりできるおうたもうたえないし!! なんのやくにもたたないからすてようってみんながいうのをれいむがかばったんだよ!! そしたら、そしたら、ありすがいったんだよ!にんげんさんはすっきりできるってえぇ!! だからおしごとをあげたんだよ!!やっとにんげんさんのおしごとがみつかったんだよおおぉ!! おしごとをしないとおいてあげられないでしょおおおぉぉぉ!!?」 言葉を失っていると、春奈が起き上がってきた。 「春奈!」 「やるって言ったのはあたしだよ、ママ」 そう言い、春奈は周囲のゆっくり達を掴んで投げ捨て、上半身裸のまま伸びをした。 「服はどうしたの!?」 「ゆっくりが持っていっちゃった。布団にしてるってさ。 スカートとパンツは髪の毛だと同じって言ったから助かったけどね」 「春奈……」 下半身のほうを見る。足は粘液に濡れていたが、内部まではわからない。 私の視線の意味を察知した春奈が説明してきた。 「大丈夫だよ。まむまむっていうのは、ここ」 春奈は自分の口を指差した。 「ここがまむまむだって教えてあげたの。それで、みんなこの中に出す出す。 つまり、食べ物には困らなかったってわけ」 それでも、娘は辛そうに息を吐いた。 「お茶飲みたい……一週間胸焼けしっぱなし」 「水なら持ってきていますよ」 「ありがと」 男の一人が水筒を差し出し、娘はごくごくと飲んだ。 「よかった………」 私は春奈を抱きよせた。 「わっ、ママ臭っ」 「あ……ごめんなさい」 「お互い様だけどね」 春奈が立ち上がり、男から差し出された大きなタオルを肩からまとう。 「本当によかった……あなたに何かあったら、ママは……」 「ファミリードラマをやってる状況じゃないんだ、ママ。 全部計算ずくだよ、こっちは」 「……何を言ってるの?」 「あのね、ママ。もう言っちゃうけど、最初から全部バレてるの」 春奈が言うには、私がゆっくり達をあの施設から逃がすと言い出したときから、 すべては施設のスタッフに筒抜けだったらしい。 春奈が早々にスタッフに伝えたこともあるが、そもそもはすべて監視カメラに映っている。 あの施設には、ほぼすべての部屋に監視カメラがあったらしい。 最新技術による監視カメラは小型かつ目立たない形状で、私には見つけられなかった。 「ママ、ドラマや映画の見過ぎ。 ヒーロー気取るのは簡単だけどさ、正義感だけじゃ運も環境も味方してくれないよ。 ママの脱出計画じゃ大雑把すぎて、気づくなってほうが無理だったよ」 「…………じゃあ……なんで止めなかったのよ」 「使えるかなって思ってさ。 あのゆっくり達の髪飾りに細工してあるのね、カメラと発信機。 あれがあれば、どこに行っても居場所はわかるし、カメラで見てる景色や話し声も筒抜け」 「…………」 「あたしは考えたのね、もしかしたらもっとドラマができるんじゃないかって。 一旦は人間に捕まって、ひどい復讐を受けるゆっくり。 ところが心優しい人間がゆっくり達を逃がしてくれる。 さて、人間に逃がしてもらったゆっくり達はどうするか。 逃がしてくれた恩人に対してどういう態度をとるか。 そういう事、全部記録してみたくてさ」 「……どこまでもゆっくりを悪役にしたいわけね」 「そういうこと。万一あれらが、もう人間に関わらないようにしたとしても、 こっちから細工してそうせざるをえないように仕向けるつもりでした。 キャンペーンのために、そういう映像は沢山あったほうがいいし、 それから生態研究のためもあるし、あと他にも映像の使い道を考えててさ」 私はがっくりとうなだれた。 ひどい徒労感に襲われて顔を上げることもできなかった。 「……あんたって子は………」 「でも、何が起こるかなんてわかんないもんだよね、ママ! あんな穴があって、そしてこの一週間でしょ。 こんなに面白い映像が撮れるなんて思わなかったよ。ゆっくり達みんな、 あたしたちが仕向けるまでもなく、たっぷりと悪役を、というか敵を演じてくれたわ。 すぐに助けを呼ばなかったのも、たっぷり記録するためよ」 そう言って、春奈は携帯電話らしきものをポケットから取り出した。 普通の携帯のようには見えない。特殊な通信機らしい。 「すぐに駆けつけて、皆さんを助けだすことは容易でした」 背後で男が言う。 「ですが、須藤春奈博士のご指示により、しばらく時間を見ました。 すべては記録されております」 「………私のことも?」 「……失礼ながら。 ただ、あの……『問題の場面』に関しては……遠隔操作で映像記録は中断しております。 どうか御信用ください」 排便させられていた事を言っているのはすぐにわかった。 「あとね、『処置』はもう全部終わってるの」 春奈が言った。 「ママ止めようとしてたけど、出発する前にあのゆっくり達はもう処置しちゃった。 もう手遅れだよ。『計画』はもう始まってるんだ」 私は顔を上げたが、言葉は出なかった。 暴れ出したかったが、それよりも脱力感が勝っていた。 なにを言っても無駄なのはわかっていたし、自分一人だけが道化を演じ続けていたことがわかった今は空しいだけだった。 ここで怒り散らしたところで、道化は道化でしかないだろう。 「こんなこと言うのはなんだけどさ、ママは怒る権利ないんじゃない? あたしたちがこんな目に逢ったのも、元をただせばママの失態でしょ。 あたしがもし携帯電話持ってなかったら、どうする気だったの?娘の人生」 洞窟の地面を眺めながら、私は春奈の言葉をぼんやりと聞いていた。 その声を聞いても、自分の娘の声だという実感はわかなかった。 袂を分かったのだ、という気がした。 住む世界も歩む道も、娘はもう私には理解できないところにいるのだ。 「長浜さんもごめんね?足は大丈夫?」 「俺の心配はしなくていい」 「でもごめんね。まあ、もともと長浜さんが勝手に追いかけてきたんだし。 なんであんなことしたの?」 「……さあね。見届けたかったのかもな」 「わっかんないなあ」 「ゆっくりそこまでだよ!!」 振りかえると、洞窟の入り口近くでゆっくり達が固まっていた。 私のれいむ始め、娘に群がっていたゆっくりが徒党を組んでこちらを睨んでいる。 「いうことをきかないおねえさんはゆっくりできないよ!!」 「よくもありすをころしたね!!ありすにはちいさいおちびちゃんがいたんだよ!! もうしわけないとおもわないのおぉ!?」 「にんげんなんかかおうとおもったのがまちがいだったね!! こんなにあたまがわるいなんておもわなかったよ!!」 「おねえさん!!」 顎を反らし、れいむは居丈高に言い放ってきた。 「れいむはおねえさんがだいすきだけど、こんかいばかりはおおめにみられないよ!! れいむはむれのなかまだから、むれのるーるはまもらなくちゃいけないよ! ゆっくりごろしはどすにどすすぱーくをうってもらうよ!!」 「どすすぱーくだよ!!どすすぱーくだよ!!」 「ゆっくりどすのところまでついてきてね!!にげようとしてもむだだよ!! おねえさんはゆっくりつみをはんせいしてね!!れいむだってつらいんだよ!!」 私たちを促しながら、れいむ達は歩きはじめた。 私たちは眼を見合せてから、ゆっくり達の遅々とした歩みについていった。 歩きながら、れいむは何度も何度も私たち親子に話しかけてきた。 「れいむはがんばったんだからね!!ずっとがまんしておしえてたんだよ!! わるいのはおねえさんたちだからね!!」 「なんでわかってくれなかったの?そんなにれいむがきらいなの? れいむはおねえさんがだいすきだったんだよ!!」 「そのめはなんなのぉ!!わるいことしたってわかってるの!?」 「れいむはおしおきなんかしたくないんだよ!! どんなにあたまがわるくても、ゆっくりできなくても、 れいむはずっとおねえさんたちといっしょにいたかったよ!! それなのにおねえさんたちはれいむをうらぎったんだよ!!れいむのかなしみがわかってるのぉ!?」 私たちは一度も答えなかった。 「ゆゆっ!!みえてきたよ!!どすたちがいるよ………ゆゆゆっ!?」 ドスまりさを始め、群れのゆっくり達は全員が補縛されていた。 施設の使用人たちが数台の車やトラックで乗りつけており、 トラックの中に網でまとめて補縛されたゆっくりが次々と押し込められている。 すでにゆっくりオーラガスの効力は切れたらしく、 網の中のゆっくり達は口々に人間を罵っていた。 「だしなさいいぃぃ!!いなかものおぉぉぉ!!」 「わからないよー!!わからないよー!!」 「ひきょうなのぜ!!まりささまとしょうぶするんだぜぇぇ!!」 「かわいいれいむをここからだしてね!!だしてねえぇ!!」 見ると、ドスまりさは網ではなくロープで、横向きに板に固定されていた。 まだトラックに運び込まれていないが、帽子を奪われてなすすべなく泣き叫んでいる。 「おぼうしいいぃぃぃ!!どすのおぼうしかえしてねぇぇ!! おぼうしさんがないとゆっくりできないよおおおおぉぉぉぉ!!」 ドススパークを撃つのに必要な特殊なキノコも帽子の中なので、 帽子が奪われて固定された今、ドスまりさは無力だった。 「むきゅううぅぅぅ!はなしなさいいぃぃぃ!」 ドスまりさの傍らには、参謀役のぱちゅりーがやはり縛られている。 「ゆ、ゆ、ゆゆゆゆゆ…………?」 「ゆゆゆっ!!たすけがきたよ!!れいむはゆっくりしないでたすけてねぇ!!」 「まりささまをたすけるんだぜ!!はやくするんだぜぇぇぇ!!」 「むきゅ!れいむ、むれをまもりなさい! むれのみらいはあなたにかかってるのよむきゅうううぅぅ!」 やってきたれいむ達に向かって、網の中のゆっくり達が一斉に助けを求めはじめた。 れいむ達は「ゆっ?ゆっ?」と鳴きながらおろおろと右往左往するばかりだった。 「例の十三匹はすでに車に乗せてあります」 「御苦労さま」 男たちの報告を受け、春奈が頷いた。 「群れは全て運び出しますか?」 「うーん、こんなにいらないかな。ドスとぱちゅ、あと五十匹ぐらいで、他はほっといていいよ」 「では、ドス達を。すでに五十匹以上集まってます」 指示していた春奈が、私に向かって聞いてきた。 「それはどうしようか?あたしはどっちでもいいけど」 春奈が指したのは、私のれいむだった。 れいむを連れて帰るのか。 ドスがいなくなったこの群れで、飼いならされたれいむが生き抜き、まして冬が越せるとは思えない。 放っていくことは殺すことと同義だろう。 しかし、今のれいむを私の家に迎え入れたいとはどうしても思えなかった。 善意からであれ、れいむがここで私にしたことを忘れ、水に流すことは私にはできなかった。 それでも、私は踏ん切りがつかず、対話を求めた。 「……れいむ」 「ゆゆゆっ!!」 トラックに運び込まれていく群れを呆然と眺めていたれいむが、 ぴょんっと軽快に跳ねてこちらを振り向き、満面の笑顔を浮かべて叫んだ。 「ゆっくりしていってね!!」 「……え?」 何を言われたのか一瞬わからなかった。 「おねえさん!れいむおいたをしちゃったね!! ゆっくりごめんなさいだよ!れいむをおこってる?」 「………」 「ゆゆゆっ!!おこらないでね!!おこらないでね!! れいむにおしおきしてね!おしおきはつらいけどがまんするよ!! そしたられいむいいこになるからね!!」 「れいむ……」 「おねえさんがおこってるとれいむはかなしいよ!! れいむはんせいするからね!ゆっくりしていってね!!」 「あなたは悔しくないの!?」 「ゆゆゆっ!?」 私はれいむの前に膝をつき、助けを求め続けている群れを指差して叫んだ。 「これを見てなんとも思わないの!?」 「ゆゆっ!おこらないでね!おねえさんこわいよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「いいから聞きなさい!! あなたの群れでしょう!?このゆっくり達があなたの家族でしょう!? 家族を縛られて連れ去られて平気なの!?怒らないの!?」 「ゆゆゆっ!?きっとみんながわるいんだよ!! わるいことをしたからにんげんさんにおしおきされるんだね!! れいむもおいたしちゃったからおしおきがまんするよ!!」 「悪いことって何よ!? あなたたちが何をしたのよ!言ってみてよ!!」 「ゆゆっ!?」 れいむはわざとらしく、可愛い仕草で小首をかしげてゆんゆん鳴いた。 かつては、この仕草をされると私は怒る気が削がれてつい甘くなってしまったものだが、 今、その仕草は火に油を注ぐ効果しかなかった。 「ゆっ!ごめんなさい!れいむはゆっくりわからないよ!! れいむにおしえてね!ゆっくりがんばっておぼえるよ!!」 「私が大好きなんでしょう!? 好きだから!ここで!私を飼ってたんでしょ!? 私が群れの仲間になるためにしつけてたんでしょ!!?」 「ゆゆゆ!だいすきだよ!!れいむはおねえさんがだいすきだよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 れいむは突然にこにこして飛び跳ね始めた。 それが伝わっているなら安心だ、と思っているのだろうか。 「だから私を飼ってたんでしょ!?」 「ゆゆゆっ!?ちがうよ!おねえさんがれいむをかってるんだよ!! れいむはわかってるよ!ゆっへん!!」 「さっきまで言ってたことと全然違うじゃない!!」 またわざとらしく首を振り始めた。 眉を八の字に困らせ、もみあげで唇をつついて考えるふりをしている。 無知ゆえの過失ということにしてごまかそうとしているのは明白だった。 「ゆゆぅ~?れいむ、わからないよ? れいむ、なにかゆっくりできないことをいったの?おねえさん、おしえてね!」 「私を!ここで!飼うんでしょう!? 私たちをゆっくりの仲間にするんでしょう!!」 「ゆゆゆっ!!そんなこといったの!? きっとれいむはかんちがいをしてたんだよ!!れいむ、ゆっくりできないね!! ゆっくりできなくてごめんなさい! れいむがゆっくりできるいいこになれるように、れいむがわるいことしたらおしえてね!!」 かつて私が躾けた、人間に対する挨拶をれいむは繰り返し叫んだ。 私はそれから、れいむがやったことを一つ一つ並べ、どういうつもりだったのか問い詰めた。 私を穴に閉じ込め、どれだけ拒否しても雑草や虫を与えようとし、排便までさせたこと。 いじめられている長浜圭一を助けようとしなかったこと。 そして、私の娘を犯したこと。 しかし、まったく会話にならなかった。 私が何を言ってもれいむは空とぼけて、 「れいむはわからないからわるいところはゆっくりおしえてね!」を繰り返すばかりだった。 「ゆゆゆ~♪かわいくてごめんねっ♪」 ついには媚びはじめた。 「かわいくてごめんね」を繰り返し、小首をかしげてみせる。 この仕草が私は昔大好きだった。 こうすれば私の機嫌がよくなると、このれいむは知っていた。 ちらちらとこちらの表情を窺いながら、ひたすら無知を装い、媚び、へつらい、 こちらの怒りが逸れ、うやむやになって収まるのを期待して待っている。 なぜ私が怒っているのかという原因には、全く関心がないらしかった。 それは、かつて私が愛したゆっくりの姿だった。 躾の行き届いた、飼い主に愛らしさを振りまく、理想的なゆっくりだった。 このれいむだけではない、私がかつて世話した何百匹のゆっくりが、 根気強い躾の末に、こういうゆっくりになった。 しかしそれは、心底から礼儀作法を重要視しているのではなかった。 自分たちのほうが立場が強く、人間の言うことを聞かなくてもいい、 そんな状況になれば、あっさりと脱ぎ捨てられる程度の仮面でしかなかった。 立場が逆転したのを理解した今、このれいむは、あわててその仮面をかぶり直そうとしている。 私はそこでようやく、苦い事実を知った。 「あんたは………」 「ゆゆっ?」 「あんたは私と話すことなんかないわけね」 「ゆゆっ?おはなしするよ!れいむはおはなしがとくいなんだよ! どんなおはなしがしたいのかいってね!ゆっくりがんばるよ!!」 「命令を聞くだけなんだ……家族なんかじゃなかった……」 「ゆゆゆっ!そんなことないよ!れいむはおねえさんがだいすきだよ! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 私が、生まれてから世話し、その死を看取った何百のゆっくり。 その中で、ただの一匹として、私に心を開いたゆっくりはいなかった。 私ひとりだけが空回りして、家族だと思っていたのだ。 ゆっくりにとっては、 「とにかく言う事を聞いてさえいれば世話してくれる便利な生き物」でしかなかったのに。 私は地面に突っ伏して泣いた。 「当たり前じゃん」 後ろで春奈が言っていた。 「人間の言う論理なんて、ゆっくりの価値観じゃぜんぜん理解できないの。 理解できない躾にハイハイ従うっていうのは、つまり強者への盲従で、思考停止だよ。 思考停止してる相手に、情も信頼もないでしょ」 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/679.html
「ゆっくり整形手術」 クーラーの風が当たる位置で寝転がり、涼しい風を全身に浴びる僕。 幻想郷もずいぶん便利になったものである。やはり河童の技術力は幻想郷一だな。 コンコン…!! 「ん?なんだ?」 ベランダのガラスを叩く音がした。渋々起き上がって、カーテンを除けて外を見てみると… 「ゆ……し…、……ね!!」 「うわぁ!!ゆっくりだ!!」 一匹の野生ゆっくりが、ガラスに体当たりしていた。 犬や猫が自分の家のガラスに体当たりしてるだけでも驚くのだから、その驚きようは理解してもらえると思う。 ガラスを隔てているため、ゆっくりが何を言っているのかは聞き取れない。 ゆっくりというのは、幻想郷に広く生息している人間の頭によく似た饅頭のような生物のようなよくわからないモノだ。 一応幻想郷に実在する人物に似ていると言われているが、その造形を放棄されたような顔面パーツや傲慢な言動のためか、 本人達はものすごい勢いで否定している、という噂だ。 実際、人里の多くの村では害獣認定されており、発見次第殺されるか加工場行きとなるらしい。 僕の目の前に居るゆっくりは、黒い帽子を被っていることから…まりさ種だということがわかった。 ガララララ!! 窓を開けると、ゆっくりまりさが何を言っていたのかが聞き取れるようになった。 「ここをまりさのおうちにするよ!!ゆべっ!?」 ちょうど助走をつけてガラスに体当たりしようとしたところを、僕が窓を開けてしまったようだ。 まりさは勢いあまってそのまま家の中に飛び込み、顔面から床に落ちてしまった。 「いだいよおおぉぉぉ!!ゆっくりでぎないよおおぉぉ!!」 痛みにのたうち回るが、裂傷は無く餡子ももれていないので、ただ痛がっているだけだろう。 僕はそのまりさをむんずと掴みあげると、顔を近づけて会話を成立させようと試みた。 「ゆ!!おにーさん!!まりさのあたらしいおうちでなにしてるの!?」 「ここはお兄さんの家だよ。さっきだってここで昼寝してたんだから」 「うそつかないでね!!まりさがここにきたときだれもいなかったよ!!」 「それはカーテンで中が見えなかっただけだろ?」 「そんなのどうでもいいよ!!まりさがさいしょにみつけたんだから、ここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!!」 僕の努力も空しく、会話は残念ながら成立しなかった。よって、速やかに虐待モードに移行する… …え?今…何と言った? 「ゆっくりできないおにーさんは、まりさたちのおうちからでてってね!!」 やはり聞き間違いではないようだ。僕の目の前にはまりさ一匹しか居ないのに…こいつは『まりさたち』と言った。 つまり、こいつは独り身ではなく家族が居るということ。 このまりさが成体であることから、おそらくこのまりさが親で他に子がいるのだと思われる。 そうだと分かったら作戦変更だ。こいつ一匹だけでは物足りないので、家族にもご登場願おう。 「ゆっくりはなしてね!!はなさないとおこっちゃうよ!!」 「お前、家族はどこに住んでるの?」 「ゆ!?わかった!まりさのかぞくにわるいことするきだね!!だったらおしえてあげないよ!!」 このまりさ、ゆっくりの平均以上の知恵はあるようだ。僕の顔と声色から、危険性を察知したらしい。 そう、そうでなくては困る。そうでなくては虐めがいが無いからな。 「教えてくれよ。お兄さんは君の家族と仲良くしたいんだよ」 「うそいわないでね!!おにーさんはゆっくりできないひとだよ!!」 一回目。僕はまりさの頬を強くつねり、そのまま捻り取った。 「ゆぎゃあぁぁぁああぁぁぁ!!!なにずるのおおおぉぉぉぉ!!??」 「これは命令じゃなくて提案なんだけどね、痛いのが嫌なら家族の場所を教えたほうがいいと思うよ」 「いやだあぁああああぁぁぁ!!ゆっぐじでぎないがらおじえないもん!!」 二回目。傷口から餡子を小さじ一杯分抉り取る。ある程度の恐怖を味わったので、そこそこ甘くて美味しい。 「いびゃあああああぁあぁぁぁ!!だじげでえええぇぇぇぇえ!!じぬううっぅぅあああ!!!」 「いや、本当にね、命令じゃないんだ。そうしたほうがいいよ、っていうお兄さんからの提案。 痛い目にあいたくなければ、お兄さんに家族の場所を教えてくれないかなぁ~」 「いぎゅっ!!いびゃっ!!」 三回目。反抗的な目だったので、片方だけ目を抉り取る。にゅるんと潤いのある球体。イクラみたいで美味しそうだ。 「めぎゃあああぁあぁぁぁああ!!まいじゃのめがあああぁぁぁああぁぁ!!」 「どう?お兄さんの提案、聞き入れてくれないかな?」 「いいまじゅ!!いわぜでぐだじゃい!!かぞぐのばしょゆっぐでぃいいまじゅううううぅぅぅぅ!!!」 一つだけになってしまった目から大粒の涙を流し、餡子を吐きつつも言葉を紡ぐまりさ。 やっと提案を受け入れてもらえたので、僕はまりさの案内に従って草原へと向かった。 透明な箱に収まったまりさを連れて、まりさ一家の巣にたどり着いたのは家を出てから10分後だった。 こんな近くにゆっくりの生息地があったとは…今度からここを僕の“ゆっくりプレイス”にしようかな。 「ま、まりさたちのおうちはあそこだよ…!」 先ほどから元気の無いまりさ。その案内によるとここら辺の木の根元に穴があるはずなんだが… と、探すまでも無かった。数メートル離れていても分かるくらいの大きな穴が、木の根元に開いていた。 これでもカムフラージュを施したつもりらしい。残念ながら、これだと一発でバレるだろうな。 「それじゃ、家族を呼んでくれ。お兄さんは君の家族と仲良くするんだからね」 「ゆぶ!やだよ!!まりさのれいむとこどもにゆっくりひどいことしないでね!!」 「そうか、じゃあまりさの目を貰おうかな。目がまったく見えない、ってどんな感じなんだろうね」 「いいまじゅ!!よびまずぅ!!」 まりさは僕の要望を快く聞き入れてくれた。 無知・無能であるゆっくりも、一生涯光の無い世界で暮らすことを想像すると恐怖を感じるらしい。 「ゆぐ、ゆっくりかえってぎだよ!!」 巣の中に聞こえるように、大声で叫ぶまりさ。 すると、巣の中から成体のれいむと子ゆっくり十数匹が一斉に飛び出してきた。 ぴょんぴょん跳ねる様がとても気持ち悪い。 「ゆっくりおかえり!!」「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくちしていってね!!」「おかーしゃんもゆっきゅりしていってね!!」 最初は笑顔だった一家だが、目の前の僕と箱に収まったまりさを見て、異変に気づいたらしい。 まりさの頬から漏れる餡子、そして抉られた目の跡を目の当たりにした瞬間、母れいむは顔を真っ赤にして怒鳴った。 「おにーさん!!まりさをはこからだしてあげてね!!」 「れいむ!!まりさはいいからみんなはにげてね!!」 「おいおい余計なことを言わないでくれよ。お兄さんは皆と仲良くしたいだけなんだから」 「うそだよ!!おにーさんはまりさにひどいことしたよ!!だからみんなはゆっくりにげてね!!」 これだけ言っても僕の言葉を理解してくれない。甚だ不本意である。 箱の中でがたがた震えながら抗議の声をあげるまりさ。僕はそれを無視して家族に呼びかけた。 「お兄さんから提案です。まりさを助けたかったら、お兄さんについてきてね! あ、これは命令じゃなくて提案だよ。だから嫌だったら別についてこなくてもいいからね!」 「だ、だめだよ!!まりさのことはきにしないでいいから、みんなはゆっくりにげるんだよ!!ゆぎゃぁっ!!」 「まりさは黙っててね。お兄さんは皆と仲良くしたいんだから、邪魔しないでくれよ」 まりさの身の程を弁えない言動に、普段は温厚な僕も立腹する。 ガツンと箱を一発殴るとまりさは一転して無言になり、目を強くつぶって震え始めた。 「じゃあお兄さんは行くよ。まりさを助けたかったらついて来てね」 「ゆぐぐ…わ、わかったよ!ゆっくりおにーさんについていくよ!!だからまりさをたすけてね!!」 「OK!それじゃ皆はゆっくりついてきてね!」 僕が歩き始めると、その後ろを母れいむと子ゆっくりたちがついてくる。 その表情は、まるでお通夜のときのそれだ。 「みんなありがとう!!お兄さんは皆と仲良くできて嬉しいよ!」 僕は後ろからついてくる一家に優しく微笑みかけながら、来た道を戻り始めた。 空き部屋にゆっくり一家を連れ込む。 れいむと子ゆっくりを先に部屋の中に導いて、最後に僕がまりさの入った箱を抱えて中に入り、扉を閉めた。 「ゆ!!やくそくだよ!!まりさをゆっくりしないでだしてあげてね!!」 別にれいむの言葉に従ったわけではないが、箱からまりさを出してやり、家族のほうへ放り投げる。 ぼよんぼよんと鈍い音を立ててバウンドしたまりさは、自力で動きを制御できず…一家の目の前を通過して、壁にぶち当たって やっと止まった。 「ゆぐううぅぅっぅ!!!いだいよおおおぉぉおおぉぉお!!!」 「まりさ!!ゆっくりだいじょうぶ!?」「おかーしゃんだいじょうぶ!?」 「いたいのいたいのゆっくりどんでけー!!」「いたいのがなおったらいっしょにゆっくちしようね!!」 そんな一家のやり取りに耳を傾けながら、僕は部屋全体を見回した。 この部屋の窓は嵌め殺しになっていて、ガラスも頑丈なものを使っている。 ゆっくりの力で何かを投げたり体当たりをしても、絶対に割れないようになっている。 そもそもこの部屋にはゆっくりが投げられるようなものなど無いのだが、念のためである。 そして…この部屋には、普通の部屋には無いものがある。 壁の、ちょうど僕の腰の高さのところから飛び出しているのは、水道の蛇口だ。 その下には青いホース。もちろん、蛇口に取り付けて使うものだ。 床は水をはじく素材で出来ていて、ちょうど部屋の中央には排水口も備え付けてある。 事が終わってから後始末がしやすいように…つまり、この部屋は“そのため”の部屋なのだ。 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」「ゆっくりちねええぇ!!」 「おかーしゃんにひどいことするおにーさんはゆっくりしんでね!!」 耳障りな声で我に返ると、足元ではゆっくり一家が僕に体当たりしていた。 ひどいこと…というと、頬を破ったことか?それとも目を抉ったことか?心当たりが多すぎて困る。 驚くほど威力の無いゆっくりの攻撃だが…どうやらこれが総攻撃らしい。 僕にとってはマッサージ以下の圧力しか感じないのだが、当のゆっくり一家は必死である。 「みんなでおにーざんをだおすよ!!」「きょうりょくすればたおせるよ!!」 「うぎゃああああ!!しねええええっぇぇえぇぇえ!!!」 全エネルギーを僕にぶつけようと、全力全開で僕の脚に体当たりしている。 そんな様子が微笑ましいが…あまりの力量差に、ちょっとかわいそうになってくる。 「ゆっくりしねえぇえぇ!!まりざのめをどっだおにーざんはゆっぐりじねええええええぇぇ!!ゆぶえっ!?」 「いびゃっ!!」「ゆげっ!!」「んがっ!!」 一番近くに居た片目だけのまりさを軽く蹴飛ばすと、周りの子ゆっくりはボーリングのピンのように弾き飛ばされた。 まりさはそのまま転がり続け、壁にぶつかると『ゆげへっ!』と鈍い声を上げて餡子を吐き、気を失った。 「わかったわかった、そいつを治す道具を持ってくるからゆっくり待ってな」 その瞬間、まるでスイッチで切り替えたかのように、一家の表情が変わった。 「ゆ!!おにーさんありがとう!!ゆっくりしないでまりさをなおしてあげてね!!」 「ついでにごはんももってきてね!!」「そしたられいむたちのおうちでゆっくちさせてあげるよ!!」 いつの間にか、ここが一家の新居になっていたらしい。そういえばあのまりさも、ここが新しい家だとか言ってたっけ。 …もういいや、こいつらと会話を成立させるのは疲れる。放っておこう。 僕は好き勝手に喚く一家を無視して、“道具と材料”を取りに台所へと向かった。 数分後、僕が部屋に戻ってくると… 「おにーさんゆっくりしすぎだよ!!」「さっさとおかーさんをなおしてあげてね!!」 「ごはんもだしてね!!そうしないとゆっくりさせてあげないよ!!」 僕の足元を這いずり回っているくせに、言動は徹底的に上から目線である。 でも、まりさを治すって約束しちゃったからなぁ。仕方ない、約束どおり直してやるか…僕好みに。 「よし、じゃあ治療するからまりさはこっちにおいで」 「ゆぐ!ゆっぐりしないでなおしてね゛!!そしたらとくべつにゆるしてあげるよ゛!!」 別に許してもらおうとも思わないけどな。 僕はまりさを脚の間に挟んで固定すると、傍らに置いた“ゆっくり治療セット”の中から餡子を取り出した。 スプーン一杯分の餡子を、目が抉られて出来た窪みの中に押し込んでいく。 「いぎゃああああぁぁぁ!!いだいいだいいだい!!!」 「おにーさん!!またまりさにひどいことしてるの!?」 「違うって。これは治療だよ。まりさは強い子だから我慢できるよね?」 「が、がまんするよ!!だからゆっくりしないでさっさとなおしてね゛!!」 餡子を収め終えると、ちょうどいい大きさの生地を穴に被せて、指を水で濡らして繋ぎ目を伸ばして定着させていく。 十数回同じ動作を繰り返せば、繋ぎ目は完全に消えうせ…もともと目が一つしかなかったかのような顔が出来上がった。 「ゆ!?どうしてふさいじゃうの!?ばかなの?さっさとまりさのめをなおしてあげてね!!」 「おかーしゃんのめをなおしてね!!」「そうじゃないとゆっくりできないよ!!」 僕の治療を見守る一家から、文句が飛んでくる。 今までの治療を見ていて、どうやら適切な処置がなされていないと感じたようだ。 「うるさいから黙って見ててね!!」 僕は一番近くにいた子ゆっくりを三匹縦に並べ、串で一気に貫いた。 「いぎゃああぁあぁぁぁぁ!!!」「いぎゃあおいいいいいいぃぃ!!」「ゆっぐじでぎなああいいいいぃぃぃ!!!」 身体のど真ん中を貫かれた激痛に三者三様の叫び声をあげる子ゆっくりたち。これが後の『だんご三兄弟』である。 適当に床の上に転がすと、れいむを始めとする一家が三兄弟の周りに集まってきた。 「ゆっくりがまんしてね!!いまたすけてあげるからね!!」「いたいのゆっくりとんでけー!!」 …うるさいのには変わりないが、注目を逸らすことが出来ただけよしとしよう。 視線をまりさのほうに戻すと、一つだけの目を血走らせながら死に物狂いで僕の脚から抜け出そうとしていた。 「こどもたちに゛ひどいことしな゛い゛でね゛!!これい゛じょうやったら゛ゆる゛ざないよ゛!!」 僕に噛み付こうとしているのだろうか、大きく口を開けて威嚇してくるまりさ。 残念だが、その口とはもうお別れしてもらうことになる。 僕は大きなお玉状の器具を使って、まりさの口とその周囲を勢いよく抉り取った。 「っ!?…んんーっ!!!??」 最初は何が起こったのか理解できていなかったまりさ。 だが、言葉を発する事が出来ないことに気づくと、んーんー唸りながら逃げ出そうと必死に身を捩り始める。 口を抉り取ったところから、さらに奥の餡子を適量取り出すと… 「………!!!」 まったく声を発する事ができなくなった。今や、このまりさの意思表示の手段は一つ残された目だけである。 口周辺の組織を全て摘出し終えたことを確認すると、僕は代わりの餡子を口だったところに押し込んでいく。 「ゆ゛!?おにいじゃんなにやっでるのおおおぉおおお!!??」 だんご三兄弟はもう助けたのだろうか、母れいむがこちらの様子に気づいて悲鳴を上げた。 「ゆぎゃああぁあぁぁ!!おくちがないよおおおおぉぉぉ!!」 「うん、邪魔だから消しちゃった」 「どうじでぞんなぎょどずるのお゛お゛お゛っぉぉぉぉ!!??はやぐなおじでねえええぇぇぇぇえ゛!!!」 治してね、と言っておきながら僕を邪魔しようと体当たりしてくる。 僕は空いた左腕でそいつを軽く払いのけると、その隙に口を埋める作業を終わらせた。 仕上げは先ほどと同じだ。適切な大きさの生地を被せて穴を完全に塞いでしまう。 「まいざのおおおぉぉ!!まりじゃのおぐぢをどこにやっだのお゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉ!!!??」 「おがーざんのおぐぢどおめめがないよおおおぉぉ!!??」「これじゃゆっぐじでぎないいいぃぃぃ!!!」 まりさの顔面を見た一家は、気の狂ったような悲鳴を上げた。 そりゃそうだろう、今のまりさの顔は…目が片方残っているだけで、他は何も残っていないのっぺらぼう状態なのだから。 口がないとだいぶ静かになるな。やはりゆっくりのウザいところと言ったら、傍若無人な発言内容だからな。 “まりさのこえきこえないの?ばかなの?”―――“はい聞こえませんよ。だって君、声を出してないじゃん” …なんてやり取りを想像してみたりして。 「お口はゆっくりするのに必要ないからね!!邪魔だから取ってあげたよ!!」 「いやあぁぁぁぁあぁ!!おぐぢがないどゆっぐぢでぎないいいいぃぃ!!!」 一家は泣き叫びながら背中に体当たりしてくる。 正面から来ないのは…まりさの酷い顔を見たくないからだろうか。 やはり痛くもなんとも無いので、放っておいて治療を続けることにした。 「………!!」 まずは帽子を脱がせ、そこらへんに放り投げる。まりさは何か言いたそうにしているが、口が無いので唸ることもできない。 次に自慢の金髪をばっさりと切り落としていく。床にはぱらぱらと金色の髪が落ちていく。 「髪もゆっくりするのに必要ないからね!!邪魔だから取ってあげるね!!」 「っ………!!」 目に涙を浮かべ、それでも何も言えないのでただじっとしているしかないまりさ。 最後は、りんごの皮むきの要領で頭部の皮を包丁で薄く剥いて、別の生地を覆い被せて定着させる。 こうすれば、二度と髪が生えてくることは無い。こいつは一生涯ハゲのままということだ。 「まりざいっぎゃあああえrがえろぱおぺおかぽぱp!!!!???」 この悲鳴は、まりさの姿を見てしまったれいむのもの。 つるっぱげで口が無く、目もひとつだけ…今やクリーチャーとなってしまったまりさの姿によほど衝撃を受けたのだろう。 そこらじゅうを飛び回り、壁や床に体当たりし、終いには餡子を吐き出しながら気絶してしまった。 ゆっくりは精神的ショックでは気絶しないと思っていたが…どうやら僕の思い込みだったらしい。 「おがーじゃん!!おがーじゃんのぎれいながみがああぁあぁぁあ!!」 「おにーさんはじね!!ゆっぐりじねぶぎゅ!?」 「はいはい、邪魔しないでねー」 耳も切り取ろうと思い、耳を探してみたが…どうやらゆっくりに耳はないらしい。 不思議なことだが、耳が無くても音が聞き取れるというのだろう。 それならそれでいい。自分の意思を表現できず、でも外部からの音だけは常に聞き取れる、というのも残酷でいいかもしれない。 仕上げに、唯一残っているひとつの目をくりぬく事にする。 先ほどは乱暴に抉り取ってしまったからかなり痛がっていたが、専用の器具を使えばほとんど痛み無く眼球を摘出できる。 お玉状の小さな器具を目に近づけていく…まりさの目に、最後の涙が浮かぶ。 その目はいったい何を語ろうとしているのか、僕にはまったくわからない。そして… 「やめでえぇぇぇえぇえぇぇ!!おがーざんのおめめをどらないでええぇぇぇぇ!!!」 「おめめがないどゆっぐりでぎないよおおおおぉぉぉ!!??」 ぐりゅんっ! べちゃっ! 顔面に残っていた最後のパーツ。左眼球が取り除かれ、床に落ちた。 悲鳴を上げなかったということは…痛みは感じなかったのだろう。よかったよかった。 先ほどと同じように、穴を餡子で埋めて生地を定着させる処置を施す。 「ふうっ…!」 額の汗をぬぐい、大きく息を吐く。 「がああぁぁあぁぁぁあぁああ!!!おがーざんがあああぁぁぁあぁぁあ!!!」 「おめめはどこぉ!?おぐぢはどこぉ!?」「がみのげはどごおおおぉぉおぉぉおお!!??」 子ゆっくりたちが大粒の涙を流しながら叫んでいる。 その視線の先にあるのは…表面に汚れ一つついていない、歪みの無いまん丸の饅頭だ。 僕が脚で挟む力を緩めると、饅頭はがむしゃらに跳ね回り始めた。 目が見えない、というか目が無いので、当然跳ねる方向はめちゃくちゃである。 壁にぶつかってはひっくり返り、バランスを崩してはひっくり返り、ただひたすら跳ね続ける。 その様子は…まるで何かから逃げようとしているようだった。 一体何から逃げようというのか、僕には分からないが…このまま放っておいて傷がつくと困るので… 「おがーじゃあああぁぁぁあぁん!!!」 「おがーざんをづれでがないでえぇえぇぇぇ!!」 僕はその饅頭を掴んで台所へ向かった。 ガスコンロに火をつけて、フライパンを温める。十分加熱したところで、饅頭をその上に放り投げた。 「……っ!!」 無言でフライパンの上を踊りまわる饅頭。これはこれで、見ていて面白いな。 僕は饅頭の頭(だと思われる部分)を掴んで、フライパンに押し付ける。 こうしておけば、饅頭の足(だと思われる部分)の機能を完全に殺す事が出来る。 数分後、いい具合に焦げてきたところで饅頭をフライパンから上げ、先ほどの部屋に戻った。 「おがーざあぁぁあん!!!おがおがないよおおおぉぉぉ!!」 「おにーさんははやぐおがーざんのおがおをなおじであげでね゛!!」 「このままじゃゆっぐぢでぎないよおおおおぉぉぉ!!??」 焼き饅頭を床に置くと、周りに子ゆっくりが集まってきた。 どうやら、ここまでやってもまだこの饅頭をまりさだと認識しているようである。 焼き饅頭は子供たちの声を耳にして必死に跳ねようとするが、底面を丹念に焼かれてしまったのでもう二度と自力では動けない。 これが饅頭の正しい姿だ。本来、饅頭は自分から勝手に動いたりしないのだから。 「…あ、そうだ!」 ふと面白いことを思いついたので、饅頭を手にとって再び“ゆっくり治療セット”を開く。 着色料を使って饅頭に色を塗り、全体をピンク色に染めていく。と、ここまでは順調だったのだが… 「こいつ、どっちが顔なんだろう?」 必要以上に綺麗に目と口を消し去ってしまったので、治療を施した僕にもどこが顔なのか見分けがつかなくなってしまったのだ。 こうなると、顔がどこだか分かるのは当事者である焼き饅頭のみ。 僕は焼き饅頭をもう一度床において、こう呼びかけた。 「お前、ちょっと前に進んでみ」 焼き饅頭はぶるぶる震えながら、それでも僕の言葉に従ってゆっくりと這いずり始めた。 散々酷い目にあわされてすっかり脅えてしまったのだろう、すんなりと言う事を聞いてくれた。 おかげで、進行方向から焼き饅頭にとっての顔がどこなのかがわかった。 再び分からなくなる前に、顔面の上の方に小豆を2粒、目の代わりとして埋め込む。 次に紅生姜を、笑ったときの口の形に切り取って、剥がれないように饅頭の顔面下部に貼り付ける。 最後に、適切な位置にピンク色の手と赤い足をくっつければ… 「あっというまに~カービィ♪」 ピンク色のまん丸の胴体に、4方向にちょろっと伸びた手足。つぶらな瞳にかわいいお口。 …どこからどう見てもカービィである。 「ほーら、かわいいでしょ♪」 それを床において、子ゆっくりたちに見せ付けてやる。 何と言ったって、見た目は明らかにカービィなのだ。世界最強の萌えキャラなのだ。かわいくないわけが無い。 「おがーざんのおがおがへんになっじゃっだああぁぁぁぁぁあ!!!」 「ゆっぐりじないでね!!はやぐもどにもどぢであげでねえええぇぇぇ!!!」 「こんなのがわいぐないよ゛!!こんなんじゃゆっぐりでぎないよおおおおぉおぉぉ!!!」 酷い言い様である。世界最強の萌えキャラを、かわいくない、と。 元まりさ、現カービィである饅頭は、なんだかよくわからないが…とにかく震えている。 そのとき、さっきまで気絶していた母れいむが目を覚ました。 「ゆ!まりさああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!はやぐまりさをなおじで…ゆっ!?」 その目に映ったのは、十数匹の子ゆっくりと…カービィ。 世界最強の萌えキャラが、れいむにとっては奇怪なモンスターに見えたのだろうか、この世のものとは思えぬ悲鳴を上げた。 「いんぎゃああぁぁっぁえろがおprpがおp!!逃げでえぇぁぇぇぇっぁいぇいえっぇぇ!!??」 …そうか、子供たちはまりさがカービィになる過程を見ていたから、目の前の萌えキャラを親だと認識しているが、 れいむは途中で気絶してしまったから過程を見ていない。だから帽子をかぶっていないまりさはただの饅頭なんだ。 さらに、その饅頭は過剰装飾を施されてカービィの姿をしているため、れいむの目には化け物のように映ったのだろう。 「おがーじゃん!!だいじょうぶだよ!!このぴんくいろもおかーしゃんだよ!!」 「でもおがおがへんなのぉ!!ごんなんじゃゆっぐぢでぎないよおおおぉぉぉ!!!」 目の前のカービィが母親であるということを、必死にれいむに伝える子ゆっくりたち。 だが、帽子をかぶっていないただの饅頭を、自分のパートナーの成れの果てだと認めるわけが無い。 「うぅ、うそをいわないでね!!そんなぴんく色のきもちわるいのが、まりさなわけないよ!!」 あぁ、かわいそう。カービィが悲しみに打ち震えているじゃないか。 きっと涙を流したいのだろう。叫びたいのだろう。否定したいのだろう。 だが…そのための目が無ければ、口も無い。自分が自分であることを表現する手段が、こいつにはないのだ。 こいつにあるのは、耳だけ。心に突き刺さる言葉を聞くための耳だけが、残されている。 「子供たちが言っていることは本当だよ。こいつは、君のまりさだよ」 「ゆ゛!!おにーさんまでうそをいうんだね゛!!こんなピンクま゛んじゅうがまり゛さなわ゛けないでしょ!! いい゛かげん゛にしないと、ゆ゛っくりさせてあ゛げないよ゛!!」 無言でびくびく震えているカービィ。その震えは悲しみなのか、怒りなのか。どちらかわからない。 「おーいまりさー!早く逃げないと食べちゃうぞー!」 「っ……!!??」 と棒読みで言いながらカービィに近づく。カービィは僕の声から離れようと、焼け焦げた身体に鞭打って必死に後ずさりする。 助けを求めることも、恐怖に泣き叫ぶことも出来ない。その顔に張り付いているのは、可愛らしい満面の笑み。 ただただ笑った顔をこちらに向けながら、声のする方向から離れようと這いつくばっている。 いやいやと顔を横に振るが、何しろその顔が笑顔なので何を言いたいのかまったく分からない。 「って、イタズラはこれぐらいにしておいて…」 僕はそんなカービィに、まりさの帽子を被せてやった。 「……ゆ?」 その瞬間、れいむの様子が変わった。 目は生気を失い、口はがたがた震えている。その視線の先にいるのは、果たしてカービィなのかまりさなのか。 「まっ…まりっじゃあぁあぁぁぁぁあおあおrぽあおpkげらえpらお!!??」 気が狂ったように跳びはねて、帽子をかぶったカービィ=まりさの元に駆け寄る。 何が起きたのか分かっていないようなまりさは、耳に入ってくる声だけでそこにいるのがパートナーのれいむであると理解した。 「まりざがっ!!まりざのおがおが!!まりざのぎれいなおがおがどうじでえ゛ぇぇぇぇぃぃい゛ぇぇ!!??」 じっと、まりさの顔を見つめるれいむ。 だが、まりさにはれいむの顔は見えていない。何かを言いたくても言葉を発する事が出来ない。 「よーく見てよ。かわいい顔だよ。かわいくて綺麗な顔だよ♪」 「ごんなのがわいぐないいいぃぃっぃい!!!まりじゃのおがおをがえじえ゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇ!!!??」 出来るのは、ただ顔面に張り付いた笑顔をれいむに寄せることだけ。れいむも、それを受け入れることしか出来ないのだ。 あまりの衝撃に、餡子を吐きそうになるれいむ。だが、寸前のところで再度気絶するには至らなかった。 「さぁ、帰った帰った。約束どおりまりさは助けてあげるよ。だからさっさと連れて帰ってね!」 一家に向けて、僕は投げやりに言い放った。 やっとショックから立ち直り始めた一家は、目の前の現実を直視して更に叫び声を上げる。 「ひどいいぃぃぃぃい!!おがーさんのおがおをゆっぐぢなおじでよおおぉぉ!!!」 「ごのままゆっぐりでぎるわげないでしょおおおぉぉぉ!!??」 「おにーざんはゆっぐりじね!!ゆっぐりじねえぇえぇ!!!ばがあぁあぁぁぁ!!!」 うーん、確かにこのまま何も食べずに放っておくと死ぬかもしれない。 そう思った僕は、ゆっくり治療セットからとあるパーツを取り出して… 「……っ!!??」 まりさの頬だと思われる部分に突き刺し、固定した。一瞬、痛みに震えるまりさ。けれども笑顔は絶やさない。 このパーツは、ビーチボールの空気穴のような形をしていて、蓋を開閉する事が出来る。 こうしておけば、この穴から食料を取り入れる事が出来るはずだ。 「これなら大丈夫だろ。この穴の中に食べ物を入れてあげれば、死ぬことは無いよ」 「どうじでごんなごどおぉおおお!!??ぢゃんどなおぢであげでねえぇえぇぇ!!!」 そんなれいむの言葉を聞いて、僕は思い切り床を叩いた。 バァンッ!! その音に、ゆっくり一家全員がびくっと震えて僕に注目する。 「お兄さんからの提案です。死にたくなかったら、全員さっさとこの家から出ていってね。 あ、これは命令じゃなくて提案だから別に従わなくてもいいよ………まりさみたいになりたいなら、ね」 僕の提案に、カービィまりさを含む一家全員が震え上がった。 ここから一刻も早く立ち去る必要がある。もし反抗したら…次は自分がまりさのようになるかもしれないのだから。 「ゆ、ゆっぐりでていぐよ!!だからこっぢにこないでね゛!!」 「ゆっぐぢにげりゅよ!!」「おがーじゃああぁぁん!!」 「ちゃんとおかーさんも連れて帰ってね!あ、だんご三兄弟を忘れてるぞ、ほら!」 庭に通じる窓を開け放つと、ゆっくり一家はわらわらと逃げていく。 自力では動けないカービィまりさは、れいむと子ゆっくり5匹に担がれて… 串で貫かれた三兄弟は、残りの子ゆっくりに担がれて部屋から出て行く。 あ、だんご三兄弟ってあれからずっと放置されてたのか… 「ふぅ、こんなもんだろう」 ぐいっと、額の汗をぬぐう。 後ろを振り向かずに逃げ去っていく一家を眺めて、僕は一仕事終えた達成感に浸っていた。 ゆっくりを粉砕するなどという野蛮な制裁をしなかったため、後始末の手間が省けてよかった。 あとは、あのカービィまりさがこの先どうやって生きていくか…それを見届けるだけだ。 カービィまりさの“目”には発信機が仕込んであるから、明日にでも様子を見に行くか。 「うーん、楽しみだなぁー♪」 遠足前の子供のような気分になった僕は、スキップで台所に向かい、昼食を作り始めた。 (終) あとがき カービィって、この世で最強の萌えキャラだよね! ちなみに、この話は続くかもしれないし、続かないかもしれない。 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/330.html
『ゆっくりりぐる』 りぐるは蛍の様なゆっくりだ。大体は後ろ髪を虫の薄羽根のように使って飛び、 綺麗な水辺に住み付き、同じく水辺に住むゆっくり達と交友を結ぶ。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ぶーん。ゆっくりしていってね!!!」 ご近所のれいむとご挨拶だ。蛍なのにぶーんが口癖で良く他の虫に間違われる。 というよりもこの挨拶のとき以外はぶーんとしか言わないことが多い。 ひたすらにマイペースな所は同じくゆっくりのちるのと似ていた。 「いっしょにゆっくりしようね!!」 「ぶーん!!」 仲良しのれいむのお誘いだ。りぐるは嬉しそうにした後、 れいむの目線ぐらいまで高度を下げ、仲良く川辺で追いかけっこする。 しばらく遊んでお昼時。 「おなかすいたよ!!!」 「ぶーん!!!」 いきなり森林の中に突っ込むりぐる。 「ゆゆ?どこいくの?!」 そう言ったれいむの元にしばらくしてから、何かを口に咥えたりぐる戻ってきた。 それをポトッと落してなにやら自慢げな顔でれいむを眺める。 「みみずさんだね!!」 「ぶん!!」 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!!」「びゅーんびゅーん、しあわせー!!」 りぐるは他のゆっくりに比べ雑食性に劣る。 淡水に住む巻貝、カタツムリに土中に住むミミズなどしか食べられないのだ。 だから、そういった貝類がすむ比較的綺麗な水辺や湿地帯でしかりぐるを見ることはない。 「すこしかわにつかってゆっくりしようね!!」 「ぶーん!!」 ・・・・・・・・・。 「ゆ。そろそろあぶないね!!ゆっくりつかっていたところがむずむずしだしたよ!!」 水に浸かった時のいつもの危険信号にれいむはすぐに水から飛び出す。 「ぶーん」 「ゆ!!あんまりおみずにつかってゆっくりしすぎるとだめだよ!!」 りぐるは平気な顔でぼけーとしていた。 水辺に住む性質上、りぐるの皮は水に溶けにくいお餅なのだ。 あせあせとするれいむを尻目に一人でしばらくぼーっとしていた。 そんなこんなで日が暮れて、 これからがりぐる達の本当の魅力が発揮される時間となる。 れみりゃも友好的なこの地方の川辺はゆっくり達の夜の社交場だ。 そしてそれを彩るりぐる達の見せ場でも合った。 後頭部をピカーッと光らせ飛び回るりぐる達は、それその物が計算された ライトアップに勝るとも劣らない美しい光の軌道を浮かばせ、 川辺に居るゆっくり達はそれに見惚れて愛を語り合う。 そして、れいむの友のりぐるも楽しげに存分に飛び回るりぐる達の中に居た。 とまあ長所も短所も多いのだが、ゆっくり達の内輪でりぐるは敬遠されることが多い。その理由は・・・。 「あつい!!ゆっくりはなれてね!!!りぐるたちみんなでれいむにあつまらないでね!!」 先程のりぐるの仲間だろう。6体のりぐるが甘えるようにれいむに擦り寄っている。 そう、りぐるはよく仲良しのゆっくりに、たかるようにすりすりしてくる甘えん坊さんなのだ。 まあ、このれいむもりぐるを嫌うほど嫌がっているわけではない、 りぐる達とはこれからも仲良くやっていくことだろう。 即興の人 このゆっくりりぐる達に 会える水辺はどこにありますか? -- 名無しさん (2010-03-02 09 05 43) ゆっくりりぐる可愛いな♪ -- 名無しさん (2010-04-09 15 05 09) ゴミはちゃんと持って帰ろう -- 名無しさん (2013-07-06 07 07 10) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/821.html
「お兄さん、もっともっといじめてぇ」 「はいはい」 靴下を脱ぎ足の裏で踏みつける 「はあ、はあ、お兄さんの足の裏臭くて気持ちいいよぉ」 そんなことをいわれてもまったくうれしくないんだがな 「あっ、ああっ、気持ちいいいぃ、すっきりー」 やれやれやっと終わった、相手が喜ぶ虐待はまるでゆっくりに奉仕してるようでフラストレーションがたまる、ドMのゆっくりとか反則だろ こいつはゆっくりてんこ、以前道を歩いているときにうっかりふんづけてしまって それ以来なつかれてしまい毎日家に通ってくる 珍しい種だったし頭もよかったので、今まで殺さずにいた 「はい、じゃあ今日はもう終わりね」 虐待でできた傷の治療を終わらせ、別れを告げる 「うん、お兄さん踏んでくれてありがとう」 ゆっくりてんこは自分の巣へ帰っていった、別にうちで飼ってやってもいいのだがてんこは子供もいるしお兄さんの迷惑になるからという理由でそれを拒否した 最初にこのゆっくりに出会ったときは、なんとかして苦しませてやろうとした しかしありとあらゆる方法を試してもてんこを苦しませることはできなかった 火責め水攻め強制運動、絶食強姦無視殴打、どれもてんこを喜ばせるだけだった 一回子供を産ませて産まれた直後に潰したことがあったが、てんこは潰された子供たちが羨ましいというだけだった もうこいつをいじめるのをあきらめようかと思ったが、今日職場の同僚が休憩時間に興味深いことを教えてくれた おかげでその日はゆっくり虐めへの期待で仕事に集中できなかった、幸い明日から週末、存分にいじめることができる 仕事が終わるとすぐに家に帰った、家に着くともうてんこが家の前で待っていた 「ゆゆっ?どうしたのお兄さんずいぶん嬉しそうだね」 どうやら顔に出ていたらしい 「ああ、今日はお兄さん機嫌がいいから朝までつきあってあげるよ」 「本当?ありがとうお兄さん」 てんこの表情が輝く、うれしそうに歌まで歌い始めた、だがもう二度とこいつがゆっくりすることはできないだろう 俺はてんこを持ち上げると後頭部に指を第一関節までねじ込みかき回す 「ゆゆっ!!?」 てんこが驚いたような声を出す、 「お兄さんお兄さん痛いよ、気持ちよくないよ」 実はゆっくりてんこの後頭部にはドMからノーマルになるつぼがあるのだ ゆっくりてんこがドMなのは成体時だけである ゆっくりてんこにとってSMは交尾であるため幼少期にSMをすると子孫が残せず死んでしまうからだ このつぼを押すことによって体が幼少期の状態になったと錯覚させることができるのである このつぼは内側の微妙な位置にあるので今までの虐めでスイッチが入ることは無かった 「どうして?こういうのが気持ちいいんだろう?」 「なんかわかんないけど気持ちよくないの、はやく、はやくぬいて」 指を抜きてんこを床においてやる、初めて感じた違和感にてんこは不安そうな顔をしている、その顔が俺の嗜虐心をくすぐる 「どうしたの?体の調子が悪いのかな、今日はもうやめる?」 その体の調子の悪い原因を作ったのは自分である、我ながら白々しい 「ゆゆっ、やめないで、今のは何かの間違いだよ」 てんこにとっての一番のゆっくりはいじめられることだ、だからそれができないなんてことを認めたくないのだろう 「どうして…、どうして…」 震えた声で独り言をつぶやく きっとこいつは今までに経験したことの無い不安を感じている、こんな不安そうな表情は見たことが無い、 「わかったよ、じゃあ次は足で踏んであげようか」 てんこに足を乗せゆっくりと力を加える 「ゆ゛っゆぎっ、ゆ゛うううっ、」 苦しそうな表情をしている、だがこれでやめてやるつもりは無い、さらに力を加える 「ゆ゛ぐうううぅ」 上面と底辺がくっつきそうなくらいに変形している 少し力を緩めリズムを取るように踏みつける 「ゆ゛っ、お兄さん゛っ、やめっ、いだいっ、いい゛っ、んぎっ」 踏みつけるリズムに合わせて悲鳴を上げるてんこはとても可愛い、もっと続けていたいがほかの拷問をする時間がなくなってしまうのでてんこから足をどける 「どうじでえ゛え゛、な゛んでゆ゛っぐりでぎな゛いの゛お゛お゛」 てんこが泣きじゃくっている間に蝋燭と串を準備する 「お゛兄ざんだずげでえええ、ゆっぐりでぎないよおおお」 「落ち着いててんこ、ほかの方法を試してみようよ、蝋燭ならきっとゆっくりできるよ」 「う、うん」 信頼している俺の言葉なので素直に従う 蝋燭に火をつけ、てんこにゆっくりと串を刺す 「いたい、やめてお兄さんゆっくり抜いて」 「てんこ、あきらめるのが早すぎるよ、ほら火であぶればきっとゆっくりできるよ、前はすごく気持ちよさそうにしてたじゃないか」 てんこを火に近づけていく 「やめてえええ、ぜっだいゆっぐりでぎないいいい、あづいよおお、おにいさんおねがいだがらやべでえええ」 こんな悲鳴を聞かされたら止めることなんてできない、興奮した俺にてんこの言葉は届かなかった 「おにいざああん、どうじでやめでぐれないのおお、でんごのぼうじが、おにいざんひをげじでえええ」 てんこの帽子に火が燃え移ってしまった、以前であれば気持ちよかっただろうが今てんこにあるのは危機感だけである いったん蝋燭からてんこをはずし帽子の火を消してやる、帽子はすでに半分以上燃えていて帽子として使えるような状態ではなくなっていた 「おにいさん…、どうしててんこはきもちよくなれないの?どうしてさっきやめてっていったのにやめてくれなかったの?」 だいぶ余裕がなくなっているようだ 「てんこが気持ちよくなれないのはお兄さんが気持ちよくなれなくなるつぼを押してあげたからだよ」 「え?どういう…」 「それと、さっきやめなかったのはてんこの反応がかわいかったから、 最初会ったときに言っただろ?俺は虐待が好きなんだって」 俺たちは最初に会ったときに自分たちの性癖をお互いに告げている 「じ、じゃあおにいさんがてんこをこんなふうにしたってこと?」 その目は明らかに俺が否定することを望んでいる目だった 「そうだよ、最初にてんこが戸惑っている様はとても可愛かった、 初めて聞くてんこの悲鳴もすごくよかったよ」 「そんな、おにいさんが…」 そんなに俺は信用されていたのか、虐待好きなんか信用するなよと言ってやりたい 「じゃあもうきがすんだでしょ?おねがいだからもとにもどして、このままじゃすっきりできないよ」 泣きそうな声で懇願されてもこっちは興奮するだけだ 「何を勘違いしてるのかは知らないけどお前は元に戻れないよ、それに最初に言ったろ?今日は朝まで付き合ってやるって」 「いやあああ、おうぢにがえじで、もうゆるじでええええ」 てんこにとって一生で一番長い夜が始まる 窓から入る光が目に痛い、気がついたらもう夜が明け始めていた とても充実した夜だった、もうてんこはここに来ることはないだろうが惜しくは無かった、今日の体験からすればおつりがくる 隣には瀕死のてんこが横たわっている、だが治療してやれば死にはしないだろう 「おにい…さん、もう…おわった?」 「ああ、治療してやるからちょっと待ってろ」 今回は朝までやったので、後が残りそうな傷がいくつかあったがやはり命にかかわる傷は無かった 今日で最後ということになると特に生かしてやる必要は無いのだが、そこは長い付き合いだったため命は助けてやることにしていた 「じゃあてんこはおうちに帰るよ、ここにはもう来ないからね」 「ああ、じゃあな」 そういえば… 「なあてんこ」 口元のゆがみが押さえられない、いやもう抑える必要はないのだが 「なあに?」 「お前って子供がいるんだよな」 そのときのてんこの顔は忘れることができない 終 ここまで読んでいただいてありがとうございました このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4375.html
※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。虐待のほかにもいろいろ書きたいことはある。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』14 この群れの中で、私たちは飼われることになった。 どれだけ懇願しても聞き入れられなかった。 群れはもとより、私のあのれいむさえ、私の懇願に耳を貸さなかった。 「おねえさん、いいかげんにしてね! むれのみんながそろそろおこりはじめてるんだよ!! ききわけがわるいとおもわれるとおしおきされちゃうよ!!」 「れいむ。本当に、お世話してくれるのは有難いと思うわ。 だけど、私たち人間は、あなたたちゆっくりとは違うの。ここではゆっくりできないわ」 「おねえさんはまだほんとうのゆっくりをしらないんだよ!! にんげんさんのむれより、ここのほうがずっとゆっくりできてるよ! ほんとうのゆっくりをおしえてあげようって、おねえさんのためにみんながんばってるのに、 おねえさんがすなおにいうことをきかないからみんながおこってるんだよ! ゆっくりりかいしてね!!」 「れいむ……」 「きょうのごはんだよ!!ゆっくりたべていってね!!」 上から落とされるのは、私たちの食事だった。 野草、茸、芋虫、蝶の死骸。 とてものこと食べられる代物ではない。 「こんな……食べられないわ。人間はこういうものは食べないのよ」 「もんくをいわないでね!! むれのみんなが、とくべつゆっくりできるごはんをおねえさんたちのためにわけてくれてるんだよ!! ごはんはそれしかないからね!すききらいをいうともうあげないよ!!」 れいむのその言葉を、私は苦い気持ちで聞いていた。 それは、かつて私がれいむに言っていた言葉だった。 『ご飯はそれしかありませんからね。好き嫌いするならもうご飯はあげませんよ』 『ゆゆぅ~!ごみぇんなちゃい!!むーちゃむーちゃ、それにゃりー……』 『わあ、ちゃんと残さず食べられたじゃない。偉いわよれいむ!』 『ゆっへん!れいみゅはしゅききりゃいしにゃいよ!』 『いい子のれいむはなでなでしてあげましょうね』 『ゆゆっ!おねえしゃんのなじぇなじぇだいしゅき~!』 「れいむ……お願いよ、せめてここから出して。逃げたりしないわ」 「ゆっ!おねえさんはまだゆっくりできてないからだめだよ!」 「でも……」 「くちごたえしないでね!むれのなかには、にんげんさんをきらってるゆっくりもいるよ!! ゆっくりできないままでそとにでたら、ほかのゆっくりにいじめられちゃうよ!! いいこになったらおそとにつれていってあげるからね!!ゆっくりいっしょにがんばろうね!!」 『おしょとにでちゃいよ!!おしょとにでちゃいよ!!おしょとでゆっきゅりしちゃいぃ!!』 『まだ駄目よ、れいむ』 『なんじぇえぇ!?おしょとであちょびちゃいぃ!!おちょもだちちゅくりちゃいいぃ!!』 『お外には、野生のゆっくりを嫌っている人もいるの。 今のままで外に出たら、そういう人たちに苛められちゃうわよ』 『ゆゆっ!?いじめりゃれるのはいやぢゃよ!!ゆっきゅりできにゃいよ!!』 『そうね。でもね、れいむが言うことをよく聞くいい子になれたらバッジをもらえるわ。 バッジをもらえば、もう人間さんにいじめられないの。 そうしたらお外に連れていってあげられるのよ』 『ゆっ!!ゆっきゅりわかっちゃよ!!れいみゅがんばっちぇいいきょになりゅきゃらね!!』 『うふふ、一緒に頑張りましょうね』 毎日、ゆっくり達は丈夫な蔓を垂らし、 その蔓に掴まってこの穴の底まで下りてきた。 その蔓を奪って上に登る手も考えたが、蔓がどこに繋がれているかもわからない。 ゆっくりが地上で蔓を掴んでいるだけかもしれず、だとしたら、 ゆっくり程度なら支えられはしても、人間が体重をかけたとたんに蔓ごと落ちてきかねない。 何より、そういう時は決まってドスまりさが笑顔で見守っていた。 ドススパークという兵器を備えているドスの監視下では、どんな抵抗も無意味だろう。 「ゆっゆっ!!おねえさんはゆっくりできてる?!」 「だめだよ!きょうもごはんさんをたべてないよ!!」 「ゆっくりできないね!!おねえさん!ぐずぐずしないでごはんをたべてね!!」 群れのゆっくり達は、降りてくるたびに食事をすることを要求した。 私はその度に首を振ったが、ゆっくり達の苛立ちは日増しにつのるようだった。 「なんでごはんさんたべないのおぉぉ!!?ゆっくりできないでしょおおぉぉ!!」 「わかるよー、すききらいするにんげんさんはゆっくりできないよー」 「むきゅう、あまやかされてしたがこえちゃってるのかしら? みんな、しんぼうづよくしつけましょう!」 「ゆっくりわかったよ!おねえさん!!さっさとごはんをたべてね!!」 施設から運び出したあのゆっくり達も毎日降りてきていた。 この子達の目的は明確に長浜圭一だった。 「ゆっへっへ!!ごみくず!!きょうもかわいがりにきてやったんだぜ!! かんしゃするんだぜ!!どげざしておれいをいうんだぜええ!!」 「ひきょうなてをつかってまりささまにかったぐらいでかんちがいするなだぜぇ!! いまこそけっちゃくをつけるんだぜ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっくりしね!!」 「しね!!しね!!あかちゃんかえせぇぇぇ!!!ゆっくりするなあぁぁ!!!」 「ごみくず!!よくもよくもあんなことができたね!!なんとかいってねぇ!!」 「すっきりするな!!ゆっくりするな!!いなかものおぉぉぉ!!!」 「あやまれ!!あやまれえぇぇ!!」 十三匹のゆっくりが、寄ってたかって長浜圭一に体当たりを浴びせる。 本来なら人間にとってたいした痛手ではないが、 折れた脚をかばっている状態では相当辛いらしく、 長浜圭一は黙って受けながら、しばしば苦痛に顔をしかめていた。 「ゆっ!ころしちゃだめだよ!!つがいがしんだらおねえさんがゆっくりできないよ!!」 群れのゆっくりは止めるでもなく、遠巻きに声をかける。 「ゆっくりわかってるよ!!」 「いわれなくてもすぐにはころさないのぜ!!いっしょういじめぬいてやるのぜぇ!!」 長浜圭一は何も言わず、うつむいたままただ黙って耐えていた。 この男があのゆっくり達にしてきたことを考えれば、止める気は起こらなかった。 ざまあみろ、という子供じみた心情がなくもなかったが、 しかし、正直、見ていて楽しい光景でもなかった。 「ゆっ!!おねえさん、よくみててね!! ゆっくりをいじめたにんげんさんはああいうめにあうんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「ああなりたくなかったら、とかいはなありすたちのいうことをよくきいてせれぶなにんげんさんになりましょうね!!」 「ゆぅ~、れいむのおねえさんはだいじょうぶだよ!!あんなふうにはならないよ!!」 「でもこのおねえさん、わがままだよ!!いうことをきかないよ!!」 「ゆっ、とまどってるだけなんだよ!!そのうちおちついたらいうことをきくはずだよ!!」 群れのゆっくり達が諭してくる。 しかし、私は頭上に開いた穴から覗きこんでいるドスまりさに向かって今日も訴えた。 「ねえ、私の言うことを信じて! 本当に危ないの。もうすぐここに人間さんがやってくるわ!」 「ゆゆぅ~、それはききあきたよ!!もういいよ!!」 「取り返しがつかないことになるのよ! あのゆっくり達が、いいえ、もしかしたら他のゆっくり達も巻き添えになるかもしれない。 次に人間に捕まったら、本当の地獄の苦しみを与えられることになるわ! それこそ、あのお兄さんがやったことなんてままごとよ!それぐらいの目に逢うのよ!!」 「ゆふぅ~、どすはにんげんさんなんかにまけないよ!! ゆっくりできないにんげんさんはどすがどすすぱーくでやっつけるよ! どすのむれはどすがまもるからね!ゆっくりあんしんしてね!!」 「ゆぅぅ、どすはゆっくりできるね!!」 「どす!!どす!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 この話を持ち出すたびに、いつもこのパターンでうやむやにされる。 威勢のいいことを言うドスに、群れのゆっくり達は興奮して飛び跳ね騒ぎ、私の言うことになど耳を貸さない。 無力感に襲われながら、私はもう一つの訴えを口にした。 「ねえ、春奈はどこ!?」 「ゆっ?ちいさいおねえさんのこと?」 何度も名前で呼んでいるが、人間の名前は覚えてくれない。 「私の子供、おちびちゃんなのよ。お願いだから子供に会わせて!」 「むきゅ、なんどもいってるわよ!!だめよ!!」 今度はぱちゅりーが口をはさんでくる。 周囲のゆっくり達がひそひそと言葉を交わした。 「ゆぅ、やっぱりにんげんさんはあたまがわるいんだね!」 「なんどもいってるのにおぼえられないみたいだよ!かうのはむりだよ!!」 「ゆゆっ、れいむのおねえさんならだいじょうぶだよ!! なんかいもいっていればおぼえてくれるよ!みんな、がんばってしつけようね!!」 ぱちゅりーは私に向かって続けた。 「おねえさんのおちびちゃんはほかのところにかくりして、むれのためにはたらいてもらってるわ! だからあんしんしなさい、むきゅ!」 「一目でもいいから会わせて!食べるものもないのよ!」 「むきゅ、ちゃんとたべてるからしんぱいしなくていいわ!」 「たべてないよ!」 群れの中から、口を挟むゆっくりがいた。 「ごはんはあげてるけど、ちいさいおねえさんもたべてないよ!」 「むきゅ、よけいなことをいわないでね!! よけいなしんぱいをさせたってなんにもならないでしょ!!あんしんさせようときをくばってるのに、むきゅ!!」 「ゆゆっ!!ゆっくりごめんなさいだよ!!」 ぱちゅりーの一喝でそのゆっくりは口をつぐんだ。 「ねえ、食べてないの!?お願い、会わせて!!ここじゃ生きていけないのよ!!」 私はそのゆっくりにすがったが、そのゆっくりは口をつぐんだままそそくさと群れの後方へ引っこんでしまう。 代わりにぱちゅりーが言葉をかぶせてきた。 「おだまりなさい、むきゅ! かんたんなことよ!にんげんさんがいいこでいれば、すぐにこんなところはだしてあげるし、 おちびちゃんにもあわせてあげるわ! いまおちびちゃんにあわせたら、にんげんさんだけでゆっくりしすぎて、むれではいきていけなくなるおそれがあるのよ! ゆっくりりかいしてね!」 群れの他のゆっくり達が、ぱちゅりーに同調して飛び跳ねる。 「おねえさん!れいむたちだって、おねえさんにおちびちゃんとゆっくりしてほしいよ!!」 「そうだよ!!かぞくでいっしょがいちばんゆっくりできるよね!!」 「だけど、いまゆっくりしすぎたらゆっくりできるにんげんさんになれないよー。 ちぇんたちだってつらいんだよー、わかってねー」 「ねんをおすけど、すっごくかんたんなことなのよ、むきゅ! みんなのいうことをすなおにきいて、ゆっくりできるにんげんさんになればいいだけよ! おちびちゃんにあいたかったらよくかんがえなさい!」 夜になれば、穴はふさがれた。 ドスまりさが蔦を結び合わせて作った大雑把な網が穴の口に差し渡され、 葉の多い木の枝が何本も網にかけられてカモフラージュされた。 この穴は、もともとゆっくりの巣だったらしい。 地下に掘られていた巣が、天井が崩れて大穴があいたために捨てられたのだろう。 空腹と心労で眠るどころではなかった。 ここに来てからもう三日が経つ。その間何も食べていないし、飲んでもいない。 腹がぐうと鳴り、みじめな気分になる。 穴の壁にもたれかかり、私は呻いた。 「腹が減ったか?」 見ると、長浜圭一が近付いてきていた。 暗がりでよくわからなかったが、片膝立ちでこちらににじり寄ってきたらしい。 「あなたは?」 「俺はいい。あんたは?」 「お腹すいてるわよ」 「食うものならあるぞ」 そう言って、長浜圭一は右手に何かを載せて差し出してきた。 暗くてよくわからなかったが、近付いて目をこらすと、餡子らしかった。 「あなた……どうしたの、これ?!」 「別にゆっくりを潰したわけじゃない。 昼の間、あのゆっくり共が俺をいじめていたろう。 その時に糞もかけられた。それを集めたんだ」 「………うんうんなの?」 「人間にとっちゃ、ゆっくりの排泄物はただの餡子だ。問題なく食えるだろう」 「……あなたは食べないの?」 「俺の分はもう食った。食え」 差し出されるまま、私はその餡子を受け取って口に入れた。 水がほしかったが、それでも餡子はとてもおいしかった。 私が食べるのを見届けると、長浜圭一はすぐに離れ、 穴の反対側の暗がりに引っこんでしまった。 すでに三日目の夜がふけようとしていた。 進退きわまり、私はこの穴の底で思い悩んでいた。 予想していたよりも遅すぎる。 あの車の発信機で、長浜圭一はバイクですぐにここをつきとめた。 長浜圭一と須藤春奈、計画の首謀者が二人行方不明となっている今、捜索が始まっていないということはないだろう。 捜索が始まったなら、足跡を辿るなり付近のゆっくりを問い詰めるなりして、 一日もかからずにここは突き止められるはずだ。 しかしすでに三日が経とうとしている。 想像していたよりも捜査が困難なのか、 それとも、考えにくいことだが、なにかの事情で見捨てられたか。 携帯電話があれば知人に連絡がとれるのだが、 悔しいことに、携帯を含めた荷物はすべて車の中に置いてきてしまった。すぐに戻ってくるつもりだったからだ。 長浜圭一はといえば、目隠しをしている間になにかの拍子に落としたと言っている。 外界と連絡する手段は一切が立たれていた。 本来、望ましい成り行きのはずだった。 あのゆっくり達を追っ手から逃がすためにここまで来たのであり、 探しても見つからないのであれば喜ぶべきなのだ。 しかし、私はどうなる? 穴の底から這いあがれず、ドスまりさに見張られてどうすることもできない。 助けがこないなら、私と長浜圭一は、ここでどうすればいいのか。 いや、どうなるのか? ゆっくりの排泄物を口にしながら、ここでずっとゆっくりに飼われながら生きていく? その可能性に思い当たり、私は心底ぞっとした。 悪寒、屈辱、閉塞感。 冗談じゃない。 「おねえさん…」 暗闇の中に、声が響いてきた。 見上げると、穴の口をふさぐ枝の一部をどかし、一匹のゆっくりが見下ろしているようだ。 声のニュアンスで、私のれいむだと知れた。 「おねえさん、ゆっくりできてる?」 「…………ゆっくりできてないわ」 「ゆゆ~、ゆっくりしていってね……」 私は立ち上がって叫んだ。 「れいむ!お願いだから話を聞いて!!」 「ゆゆっ?なんでもいってね!」 「今すぐここから出して!春奈にも会わせて! ドスまりさのいない今ならできるわ!」 「ゆっ!だめだよ、おねえさん!! ここじゃないとほんとうにゆっくりできないんだよ!!おねがいだからゆっくりりかいしてね!!」 もしかしたら助けに来てくれたのではないかという淡い期待はもろくも裏切られた。 本心から、このれいむは私をペットだと思っている。 「おねえさん……どうしてみんなのいうことをきかないの?」 「人間はここじゃ暮らせないのよ。 あなたたちゆっくりの食べ物は私たちは食べられないわ!」 「ゆっくりがまんしてね!ここのごはんさんはそれしかないよ!」 「私の家に住んでいた時は、あなたももっとおいしいご飯を食べていたでしょう?」 「ゆゆっ!あまあまはゆっくりできたよ! でもむれのみんなとむーしゃむーしゃするほうがもっとゆっくりできるんだよ!! にんげんさんのむれはゆっくりできなかったよ!!」 「にんげんさんはゆっくりできる」、それがこのれいむの口癖だった。 そのれいむが今、人間はゆっくりできなかったと断定していた。 いざという時のことを考え、日頃から甘くない食事をする訓練をしていたことを、 私は初めて後悔した。 いっそのことあまあまばかりを食べさせて舌を肥えさせておけば、 野生の群れに溶け込むこともできず、私の脱出に協力してくれただろう。 「そんなにここがゆっくりできるの?」 「ゆっ!あたりまえだよ!!ここはさいこうのゆっくりぷれいすだよ!! おねえさんもすなおになってこころをひらけばすぐにわかるよ!!」 「群れは楽しいことばかりじゃないのよ?冬籠りは辛いわよ。 森の食べ物なんてすぐに食べつくして、いつも移動しているのがゆっくりの群れ。 れみりゃやレイパーに襲われることだってあるのよ?」 「ゆゆぅ~、だいじょうぶだよ!みんなとちからをあわせればのりこえられるよ!!」 ゆっくりの群れに初めて参加したばかりのれいむは舞い上がっているようだった。 大勢の同種の仲間ができたことを今はひたすら喜んでいるが、 自然の厳しさがまるで実感できていない。 人里に近い群れでは、冬籠りを初めとした自然の厳しさに苦しみ、人里に下りてくるゆっくりが後を絶たないというのに。 冬が来れば、人家の庇護に慣れきったれいむが早々に根をあげることは目に見えている。 しかし、今は夏だった。 どれだけ言葉をつらねても、「みんなとちからをあわせればへいきだよ」の一点張りで一蹴された。 「おねえさんはゆっくりできてなかったよ!」 れいむはそう言った。 「にんげんさんのむれは、みんないつもいそがしそうにうごきまわっててゆっくりしてないよ! おねえさんだって、まいにちおそとにいって、れいむたちとあそんでくれなかったよ!!」 「それは……しょうがないのよ、れいむ。 人間の群れでは、みんな働かないと御飯が食べられないのよ。 ゆっくりだって狩りをするでしょう?」 「そんなのおかしいよ!ゆっくりよくかんがえてね!! かぞくやおともだちといっしょにゆっくりするのがいちばんだいじなおしごとでしょお!? かりもだいじだけど、それがおわったらみんなずっとゆっくりしてるんだよ!! おねえさんのかりはながすぎるよ!!ぜったいおかしいよ!!」 『おねえしゃん!!どきょいきゅのおぉぉ!?』 『お姉さんはお仕事よ。いい子でゆっくり待っててね』 『いやぢゃ!!いやぢゃ!!ここにいちぇよおぉ!!あしょんでよぉぉ!!しゅーりしゅーりしちぇえぇ!!』 『めっ!わがまま言わないの。おしおきよ?』 『ゆうぅ!おしおきはやめちぇぇ……ゆっきゅりわかっちゃよぉ……』 『いい子ね。帰ってきたらたっぷり遊んであげるわ。お土産買ってくるからね!』 『ゆうぅぅ!!はやきゅ!はやきゅかえっちぇきちぇにぇぇぇ!! おねえしゃんもゆっきゅりしちぇねえぇえ!!』 「……れいむ、ごめんなさい………」 「ゆっ!だいじょうぶだよ!!ここならおねえさんもゆっくりできるんだよ!! たっぷりゆっくりしていってね!!」 私は首を振るしかなかった。 れいむはそれからも説得を重ねてきたが、私はうなずくわけにはいかなかった。 こんなところで一生を過ごすなんて考えられない。 ついにはれいむが癇癪を起した。 「いいかげんにしてよおぉ!!なんでわかってくれないのおぉぉ!!? れいむやむれのみんながきびしいことをいうのはぜんぶおねえさんのためなんだよぉ!! にんげんさんなんてゆっくりできないのに、 みんなはやさしいからおいださないでめんどうをみてくれてるんだよ!! おねえさんがわがままをいってもがまんしてかってくれてるのに、 なんでおねえさんはじぶんのことしかかんがえられないのおおぉぉぉ!!?」 「れいむ…………」 れいむは怒鳴り、そのまま穴の淵から消えてしまった。 『わがままを言うんじゃありません!なんでわからないの?』 『ゆゆっ……』 『おねえさんはれいむには厳しく見えるかもしれないわ。 でも、れいむが憎いわけじゃないの。 れいむがいじめられたりしないように、れいむにはバッジが必要なのよ。 今はつらいけど、一緒にがんばりましょう』 『ゆゆぅ~……ばっじしゃんはゆっきゅりできりゅ?』 『ええ、とっても!』 『ゆっ!れいみゅ、がんばりゅよ!』 『そうね。そのためには自分のことばかり考えてちゃだめよ? 他の人やゆっくり達がゆっくりできるにはどうするかを考えられるのが本当のゆっくりなの』 『おねえしゃん……でも、れいみゅにはわきゃらにゃいよ……』 『それはこれからお姉さんが教えてあげるわ。少しずつ覚えていきましょうね』 『ゆっ!!みんにゃをゆっきゅりさせりゅよぉ!!』 苦い回想を噛みしめていると、数分後にれいむが再び顔を出した。 れいむは言った。 「……おねえさん。 ついきびしいことをいったけど、ほんとうにおこってるんじゃないよ。 れいむはいつもおねえさんのみかただからね。 みすてないからあんしんしてね。……ゆっくりおやすみなさい」 それきり、れいむは本当に行ってしまった。 私は泣いた。 悔しかった。 生まれたときから何年も躾け、愛し、人間との上下関係を教えてきた。 生来プライドの高いゆっくりを辛抱強く訓練し、 私の方が飼い主であり、人間に飼われているという立場を自覚させ、 その線引きをわきまえてこそゆっくりできるのだと教えてきた。 ゆっくりの本能に打ち勝ち、れいむの心身に沁み込んだと思いこんでいたその教えが、 ゆっくりの群れに入ったとき、一瞬でたやすく覆されてしまった。 今、私のれいむは、大勢の仲間たちに同調し、私をペットとして下に見ている。 理性では、当然のこととして理解できていた。 違う種族よりも、自分と同じ種族の言うことに従うのは生物として自然なことだろうし、 人間のもとで躾られ、様々なことを我慢させられてきたれいむにとって、 ゆっくりすることが何より優先され、正義とされるこの群れはまさに天国だろう。 今のれいむがやっていることに、生物として、不自然なところは全くなかった。 しかし、理屈でそう理解できても、感情まではコントロールできなかった。 私は地面に突っ伏して泣きじゃくった。 「あらゆるゆっくりと、考えうるかぎりの接し方を経験し、ゆっくりと仲良くなる方法を研究してきた」 長浜圭一が、暗がりの奥で喋っていた。 「あんた、そう言ったな」 「…………」 「ゆっくりに飼われる、というパターンは試さなかったのか?」 返答する気力もなく、私は泣きつづけた。 四日目の昼が訪れようとしていた。 「ゆっ!!ゆっくりしないでごはんさんをたべてね!!」 「おちびちゃんたちもおしえてあげてね!!」 「ゆゆっ、おねえしゃん!!ごひゃんしゃんはゆっきゅりできりゅんだよ!! みちぇちぇにぇ!!むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ~♪」 「ほら、おちびちゃんにだってできるんだよ!おねえさんもがんばろうね!!」 ゆっくりに囲まれながら私は苦しんでいた。 服の下を脂汗がしたたる。 切実な問題が私の体を襲っていた。 便意だ。 もともと多少便秘気味ではあったが、いいかげん限界だった。 オシッコの方は、真夜中に暗がりの奥でなんとか気付かれないようにすませたが、 大きいほうは気付かれないようにというわけにもいかない。 なにしろ証拠が残るのだ。 とうは立っているが、女として、排便を見られるのだけは避けたい。 そんなところを見せるぐらいなら死んだほうがましだ。 そう思って耐えてきたが、もう限界だった。 痛む腹を抑えながら、私はゆっくり達に訴えた。 「お願い……お願い、ここから出して……」 「またわがままいううぅぅ!!」 「いいきゃげんにしちぇにぇ!!れいみゅもおきょるよ!!」 「駄目よ。本当に駄目なの………あの、あれ、うんうんしなきゃ……」 「ゆゆゆっ!!」 ゆっくり達が顔を見合わせた。 「ゆっ!おといれさんをおしえるちゃんすだね!!」 「おねえさん!うんうんはきめられたところでしかしちゃいけないんだよ!!」 「いまおといれさんをつくってあげるからね!!」 見る間に数匹のゆっくりが、上から草の束を運んで洞窟の端に積み上げた。 「ちょっと……何、それ……?」 「ゆっ!おといれさんだよ!!うんうんはここでしてね!!」 血の気が引いた。 どうあってもここでしろというのか。 「い、嫌!嫌よ!絶対に嫌!!」 「なんでいうこときかないのおぉぉ!!?」 「おねえさんのためにせっかくつくってあげたんだよおぉ!!もんくいわないでつかってねえぇ!!」 私は拒否したが、拒否したところで事態は好転しそうになかった。 私は、せめてもの譲歩を願った。 「わかった……そこにするわ、するから……見ないで。みんな上に上がって待ってて」 「ゆっ!!だめだよ!!」 「そうだぜ!!まりさたちがおしえてあげないと、きっとまちがえるのぜ!! なれるまではうんうんのしかたをおしえてあげるんだぜ!!」 「間違えない……間違えないから!!」 「いいかげんにしてねぇ!!さいしょからじょうずにできるわけがないでしょおぉぉ!!? だまってれいむたちのいうとおりにしてねぇ!!」 ゆっくり達が意地になって飛び跳ねる。 私は長浜圭一の方を見た。 長浜圭一はいつもの様に、施設のゆっくり達に取り囲まれて体当たりを受けていたが、 今の話を聞いていたのか、こちらには完全に背を向けてうずくまっていた。 気遣いはありがたかったが、それでも踏ん切りがつかなかった。 わめきたてるゆっくり達に、私は首を振り続けた。 その時、施設のありす達が蔦に捕まって降りてきた。 今日も長浜圭一を苛めにきたようだが、遅れてきたのは珍しかった。 「ゆっ!おそかったね!」 施設のまりさがありす達に声をかける。 ありすは紅潮した頬を震わせて答えた。 「ゆふぅ~……きょうもたっぷりすっきりしちゃったわ! にんげんはやくたたずのいなかものだけど、おはだとまむまむだけはとかいはね!!」 人間? すっきり? 「どういう事?」 私は思わず聞いていた。 「ゆゆ?かちくのくせにありすにはなしかけないでね! ごみくずとちがってありすはこうきなせれぶなのよ!」 「すっきりって何!?人間って誰のこと!?」 「ゆゆっ、きまってるじゃない。おねえさんのおちびちゃ――」 「よけいなことをいわないでね!!」 私のれいむが遮った。 「むれになれて、けいかいしんがとけるまでいっちゃだめっていってるでしょおぉ!? せっかくおねえさんがなつきそうなのにいぃ!!」 「ゆふんっ、おしえてあげればいいじゃない!」 嗜虐を顔に浮かべて、ありすは言い放った。 「おねえさんのおちびちゃんは、むれのすっきりようにんげんとしてはたらいてもらってるわ。 にんげんのおはだはとってもすべすべですっきりできるってことを、 とかいはなありすがみんなにおしえてあげたのよ! それからみんなあのおはだとまむまむにむちゅう。 やくにたたないくそどれいだったけど、むれでのおしごとができてよかったじゃない。 にんげんがあいてならあかちゃんはできないから、めんどうごとがなくてべんりよね!」 「いいかげんにしてね!おねえさん、ぜんぶうそだからね!!ね、みんな!!」 私のれいむが群れに賛同を求めると、不自然に統一された返答が返ってきた。 「ゆゆっ!れいぷなんてしてないよ!おねえさんはあんしんしてね!!」 「まりさもしてないのぜ!!あんしんするのぜ!!」 「しんぱいしないでおねえさんはゆっくりにしゅうちゅうしてね!!」 「にんげんさんはきもちいいけど、れいむはしてないよ!!あんしんしてね!!」 「おねえさんはしんぱいしなくていいから、みんなのいうことをきいてね!!」 ドスまりさも頭上から叫んでいる。 春奈。 まだ十一歳になったばかりの私の娘。 私の春奈が、おそらく食事もできないまま、何十匹ものゆっくりの慰みものにされている。 私は生まれて初めて、ゆっくりを潰したいという強い衝動にかられた。 しかし自分の力では穴から出ることもできず、ドスまりさが見張っている状況下ではそれもできなかった。 「私の子供には手を出さないで!」 「ゆゆっ!だからなにもしてないよ!!ゆっくりしんじてね!!」 「だいじょうぶだよ!! にんげんさんはほかにおしごとがないからしかたないんだよ!!」 「おしごとをしないにんげんさんはおいておけないよー、わかってねー」 「そうなんだぜ!!でもまりさたちはなにもしてないのぜ!!」 「すっきりしたいなら私がしてあげるから!子供は許してよ!!」 私は叫んだが、あの施設のありすが断定してきた。 「くそばばあじゃすっきりできないわよ!いなかものね! おちびちゃんのおはだのほうがすべすべですっきりできるわ!! いちばんすっきりできるのは、うまれたばかりのおちびちゃんよ!! わかったらもっとあかちゃんをつくりなさい!!」 「そんな……!」 「ゆゆっ!!」 群れのゆっくり達が色めきたった。 「おねえさん!!あかちゃんつくってね!!」 「れいむたちはなにもしないよ!!あんしんしてあかちゃんつくってね!!」 「あかちゃんはすっきりできるよ!!……まちがえたよ!!ゆっくりできるよ!!」 「おちびちゃんにはなにもしないからね!!あかちゃんつくってね!!」 満面の笑顔で、ゆっくり達は要求しつづけていた。 一縷の望みでもあれば、土下座でもなんでもして懇願しただろう。 悪意からの監禁であれば、相手の気がすむように自分を貶めてみせただろう。 しかし、このゆっくり達は、善意で私を監禁していた。 こうしたほうが私のためになると、心底から信じこんでいた。 私が何を懇願しようと、万が一にも聞き入れられることはないだろう。 私の願いを聞けば、私のためにならないと思っているのだから。 道は一つしかなかった。 このゆっくり達に服従し、群れのペットとして言われるままに従う。 そうやって安心させれば、ここから出られる。 出られさえすればチャンスもあるだろう。 長浜圭一が依然として背を向けているのを確認した後、 私は泣きながら、ズボンのベルトに手をかけた。 「やったよおぉぉ!!うんうんできたよおおおぉぉ!!!」 群れのゆっくり達が飛び跳ね、はしゃいでいる。 「ここがおといれさんだからね!!うんうんはいつもここでしてね!!ゆっくりおぼえてねぇ!!」 「みんな!れいむのおねえさんはやっぱりいいこだったでしょ!!ゆっへん!!」 「みんなでがんばったかいがあったねえぇ!!」 「えらかったね!!えらかったね!!」 「すーりすーりしてあげるね!!すーり、すーり!」 「おねえさん、そのちょうしだよ! これからもいうことをよくきくいいこでいれば、いつもすーりすーりしてあげるからね!!」 「ごほうびをあげるね!!まりさのだいじなたからもののいしさんだよ!! おねえさんがはじめていうことをきいたきねんだよ!! これからもみんなのなかまになれるようにがんばろうねぇぇ!!」 「ゆゆぅ~、くちゃいよ!!にんげんしゃんのうんうんはゆっきゅりできにゃいよ!!」 「ゆゆっ、そんなこといっちゃだめだよ!!おねえさんはがんばったんだよ!!かわいそうでしょ!!」 自分たちの努力と勝ち取った美談に酔い、互いに頬を取り合って屈託なくはしゃぐゆっくり達。 そのどれもが、一点の曇りもない善意と達成の確信に満ちた表情を浮かべ、満ち足りている。 私は、うつむいてただ泣いていた。 泣いても無駄だとわかっていたが、どうしても涙を止めることができなかった。 その日から、私はゆっくり達の命令に服従した。 虫はどうしてもだめだったが、それ以外の食事はなんとか口に押し込んだ。 「うぶ……うぐっ」 「ごはんさんをたべたらむーしゃむーしゃしあわせーしてね!! しあわせーをしないとゆっくりできないよ!!」 「む……むーしゃ、むーしゃ、しあわせー……」 「もっとおおきなこえでわらいながらいってね!!ゆっくりできるよ!!」 「むーしゃむーしゃしあわせー!!」 「よくできたね!えらかったね!!ごほうびにすーりすーりしようね!!」 『むーちゃむーちゃ、しあわちぇー!』 『こら!しあわせーはまだ駄目!黙って食べなさい』 『どぼちちぇえぇ!?むーちゃむーちゃちあわちぇーちにゃいとゆっきゅりできにゃいよ!!』 『食べながらしあわせーを言ったらご飯がこぼれちゃうでしょ? ほら、こんなに散らばっちゃってるじゃない』 『ゆゆっ!!でもちあわちぇーちにゃいとおいちくにゃいよ!!』 『しあわせーは全部食べおわってからならしてもいいわ。 たくさん我慢してから最後にしあわせーしたほうがゆっくりできるわよ?』 『ゆぅぅ……ゆっきゅりわかっちゃよ……むーちゃ、むーちゃ』 『むーちゃむーちゃもだめよ。静かにお行儀よく食べてね。お行儀のいいゆっくりになればバッジがもらえるわよ』 『ゆゆぅ~………しあわせー!!』 『はい、よくできました!明日は「ごちそうさま」を覚えましょうね』 『れいみゅがんばっちゃよ!!なーでなーでしちぇにぇ!!』 「うんうんちゃんとしてるね!!いうことをきくおねえさんはゆっくりできてるね!!」 「うんうんをかたづけてくるからね!!おといれさんをきれいにしてあげるよ!!」 「おにいさんもおねえさんをみならってね!!そんなところにうんうんしちゃだめだよ!!」 長浜圭一のほうは、さすがに私の傍で便を処理するわけにもいかず、 夜中に反対側の壁に穴を掘ってすませているらしかった。 「おうちのなかでおといれさんいがいにうんうんするとゆっくりできないよ!!」 「おねえさんはいいこだからもうわかってるよね!!」 「ゆっくりできるね!!」 『これは何!?』 『ゆっ!おねーしゃん、おきょっちぇるにょ?れいみゅわりゅいこちょしちぇにゃいよ!』 『いいから答えて。これは何かしら』 『ゆゆっ!きゃわいいれいみゅのうんうんだよ!!』 『こら!決まったところ以外でうんうんしちゃいけません!』 『ゆっ!?れいみゅはうんうんがしちゃかっちゃんだよ!!ゆっきゅりきゃいしちぇにぇ!!』 『言い訳になってません!謝らないとおしおきよ?』 『ゆゆっ!やめちぇにぇ!やめちぇにぇ!!ごめんなちゃいぃ!!』 「ゆっくりおうたをうたおうね!!れいむがうたうからよくきいてね!! ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪」 「れいむのおうたはゆっくりできるんだぜ!! おねえさん、まねしてうたってみるんだぜ!!」 「……ゆっゆっゆ~~♪」 「ゆゆっ!やめてね!ゆっくりできないよ!!」 「きたないこえだね!!ゆっくりしたおうたをうたえないとなかまにはいれないよ!!」 「ゆっくりおしえてあげるからね!!がんばってゆっくりうたえるようになろうね!!」 「ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~……」 「きくにたえないんだぜぇぇ!!まじめにやるんだぜぇ!!」 『ゆゆ~ゆっゆ~♪ゆゆゆゆ~ゆ~♪』 『れいむ、静かにしなきゃだめよ。お隣さんの迷惑になっちゃうでしょ?』 『ゆゆっ!!れいみゅはおうちゃをうちゃいたいよ!!おうちゃはゆっきゅりできりゅよ!! おねーしゃんもれいみゅのおうちゃでゆっきゅりしちぇにぇ!!ゆっゆっゆ~♪』 『だめよ!むやみに歌っちゃだめ。ゆっくりのお歌が嫌いな人間さんもいるんだから』 『にゃんでぇぇぇ!?うちょいわにゃいでにぇ!!』 『嘘じゃないわ。これからは、お姉さんがいいと言った時だけ歌うようにしてね。 明日は広い野原に連れていってあげるから、そこで一杯歌ってね』 『ゆゆゆっ!たのちみ~♪』 いつまでたっても助けはこなかった。 夏場の洞窟はひどく蒸し、服を変えることもできず、 汗や便の悪臭が洞窟内に充満した。 その悪臭のために、ここに下りてくるゆっくりはやや減少したが、 教育熱心なゆっくりや、長浜圭一への復讐にかられた施設のゆっくりは毎日やってきた。 一週間が過ぎたころ、私の心にはあきらめの影が差しこみはじめていた。 本当に、一生をこの群れの中で過ごすのかもしれない。 よしんば仲間と認められて外に出られたところで、私に割り当てられる仕事は何になるのか。 まさか本気で、私に子供を産ませ、それをすっきりに使う気でいるのか。 人間の常識も倫理もここでは一切通用しない。 まして家畜の子供など、鶏の卵のように利用されるだけだとしても不思議はない。 自殺の可能性さえ頭をよぎる。 助かりたかった。 この地獄から一刻も早く抜け出したかった。 同時に悲しかった。 自分の中でのゆっくり像が、憎々しいものに変わっていくのをどうすることもできなかった。 毎日ゴミ同然の雑草を食べさせられ、大勢の注視のもと排便させられ、罵られながら喉が涸れるまで歌わされた。 この生き物を、もはや前のように愛することはできないだろう。 そしてまた、自分自身も悲しかった。 確かに、私が今されていることは、かつて私がゆっくり達にしてきたことなのだ。 食事中の「しあわせー」を禁じ、歌も制限し、好き嫌いを許さなかった。 ゆっくりの要求を殆ど抑えつけ、一方的に人間に都合のいい常識を押し付けてきた。 それでも、ゆっくり達は曲がりなりにも私になついてくれた。 私のれいむがここで私の躾をしているのも、私を愛しているからこそだろう。 意趣返しというか、上に立つことの優越感は十分楽しんでいるようだが、私にそれを責める権利はない。 ここで世話をされながら、私はゆっくりに感謝することができなかった。 かつて私のゆっくりたちがしてくれたようには、自分の常識を曲げてまで相手の善意に報いることができない。 あれほどゆっくりを愛していたはずなのに、その善意に応えることができない。 ゆっくりのように、自然に無邪気に、強者の膝元に這いつくばることができればどれだけ楽か。 明らかに相手より弱い立場にいながら、私は弱肉強食という自然の摂理に逆らい、 人間としてのプライドに縛られて相手を怨むしかできない。 あれほど、ゆっくりを愛しているつもりでいた。 それは結局のところ、自分のほうが上に立っているという安全地帯での傲慢なままごと遊びでしかなかった。 いまや私は、 はやく見つけ出してもらい、娘ともども助け出してほしいというただそのことのみを願い、 ゆっくりをあの悪魔のような計画から守るという当初の大義は雲散霧消してしまっていた。 そんな私の弱さが何よりも悲しかった。 やがて八日目の昼になると、助けが現れた。 続く
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1559.html
ここはゆっくり達の住む森。その川辺の家でゆっくりリグルがカサカサと目を覚ました。 「ゆっくりおはよう!」 そんなリグルに川のゆっくりにとりが 「ゆっくりおはよう!」と返してくる。 リグルはゆっくりキスメ特製の桶に水を汲むと飛び立った。行先はリグルの花畑である。 桶の水をまき終えるとミツバチの巣に飛んで行った。 リグルは虫と会話する程度の能力でミツバチと交渉し、リグルは花畑を管理する代わりに、ミツバチたちはその代償に蜂蜜を分けるという契約だ。 リグルは蜂蜜を受け取ると森の奥にカサカサと進んで行った。先にはゆっくりの家があった。家の前には不安げな顔をしたれいむとまりさがいた。 「あっ、リグル!」 「お薬を持ってきたよ!」 二人が不安げな顔をしているのは子供が倒れてしまったからだ。ここ2~3日前から暑さのせいか子れいむはぐったりとして倒れてしまった。 そこでゆっくりにとって薬の効果がある蜂蜜を持ってきたのだ。 去年の冬、寒さに弱いリグルが行き倒れているところをこのれいむ親子が助けてくれた。 寒い冬の間すりすりをして温めてくれ、蜜を持った花を持ってきてくれた。今度は自分の番だ。 「ゆっくり飲んでいってね!」 文字通りとろけるような甘みが餡に染み渡る。みるみるうちに子れいむは元気を取り戻した。 「あま~い!しあわせー!もっとのませてね!」 この場合「良薬口に甘し」なので飲みすぎてしまうのが難点だ。 「もう!駄目でしょう!」親れいむの顔にも明るさが戻る。 「ありがとうなんだぜ!」まりさも喜びいっぱいだ。リグルは桶の中から花を出すと 「このお花は蜜がたっぷりあるからゆっくりちゅーちゅーした後はむーしゃむーしゃしていってね!」 そう言ってリグルは次の仕事へ飛び立った。 昼からはのうかりんの畑で他の虫と一緒に受粉を手伝った。虫たちは蜜を吸えるし、 のうかりんとしては手作業でやる受粉の手間が省けるというわけである。 「お~ごくろうさんだっぺ。」 仕事が終わるとのうかりんから報酬としてきゅうりとある袋を受け取った。 次にリグルはゆっくりの竹林にある「えいえんてい」に向かった。 「ゆっくりこんにちわ!蜂蜜を納めにきたよ!」 「あら、いらっしゃい」中からゆっくりえーりんが現れた。 リグルはゆっくりのお医者さんであるえーりんにゆっくりの薬にもなる蜂蜜を納めているのだ。 その代り仲間のゆっくりが怪我や病気をした時診てもらうのだ。 「あとこれは姫様にどうぞ!」 リグルが差し出した袋は「のうかりん印のポテトチップス」だった。ヒマワリ油でカラッと揚げたのうかりん自慢の一品だ。 えーりんが仕える“姫様”ゆっくりかぐやの大好物にとって大好物であることは言うまでもない。 「どうもありがとう、姫様も喜ぶわ。」えーりんは礼を言う遠くから袋を持ってきて 「今日はこの小麦粉を持って帰りなさい。怪我をした時水で練って貼れば治るし、いざという時は食糧にもなるわ。」 「ありがとう!」 夕方になりリグルは川辺の家に帰ってきた。 蛍のような光とカサカサという音からリグルだと気付くとにとりは 「ゆっくりおかえりなさい!」と声をかける。 「ゆっくりただいま!にとり!今日はおみやげだよ!」とキュウリを差し出す。 「ゆゆっ!キュウリさん!!」 河童のゆっくりであるにとりにとってキュウリはまたとない好物だ。 リグルはキュウリに蜂蜜をかけて食べ、「ゆっ!まるでメロンみたいだよ!」 そんなリグルを見ながらにとりは「ゆっ!キュウリはモロキュウにかぎるよ!」と丸かじりでむーしゃむーしゃしている。 「「むーしゃ、むーしゃ!しあわせー!」」 今日もゆっくりとした日が暮れる。 助け合いゆっくりですね♪ 実によく表現されています -- 名無しさん (2009-08-18 12 29 09) これが本当の平和かもな♪ -- 名無しさん (2010-03-15 15 57 23) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/490.html
八月。 蓬莱の人の形も うだるような猛暑の中、全国の都道府県の代表48校が凌ぎを削る、過酷な大会が開催されていた。 ~全国高等学校ゆっくり野球選手権大会~ 即ち、ゆっくりをボールにした野球(通称ゆ球)の大会である。 高ゆ連が採用したゆっくりボールは、小麦を何重にも塗り重ねて外皮を強化した ゆっくりである。丈夫で安全なゆっくりボールは、安全性を追求する世間の風潮に対応するための、会心の策であった。 また、繁殖して生まれた子供達も強化ゆっくりとなったため、資源や経費の節約にも多いに役立ったのである。 本日はその大会の一回戦第二十四試合。この試合で二回戦に進む24校が決定するのである。 一回戦最後のカードは東方義塾vs幻想学園。 東方義塾がここまでこれたのは、エースピッチャーのおかげである。 その名は虐待お兄さん。3年生であり、今年が高校生活最後の夏である。 エースのエースたる所以はその変化球にあった。 今大会で使用するボールは、高ゆ連により れいむ種に統一されている。 ピッチャーはそのリボンや口に手をかけて、ゆっくりを投じる。 以前の硬球以上の引っ掛かりがあるため、様々な魔球が大会を彩っていった。 虐待お兄さんも、そんな魔球の1つの使い手である。 ナックルボールの要領で投げる、"ゆっくる"である。 ゆっくりの後頭部に爪をつきたて、はじくようにゆっくりを投じる。 ほぼ回転の無いゆっくりは、その気分に任せてわずかながらの空中制御し、自然とバットを避けようとしてくれるのだ。現代が生んだ最強の魔球であるといえよう。特に、虐待お兄さんのそれは爪の食い込みと弾きが強く、ゆっくりをゼロ回転で投じることができるのだ。 さらに、虐待お兄さんはその投球の9割以上"ゆっくる"を投げる、 生粋のゆっくるぼーらーなのである。 その圧倒的な魔球に、この試合にもプロのスカウトが多数視察に来ているほどである。 対する幻想学園は、その打撃力を売りにしてここまで勝ち上がってきた。 特に1年生にして4番をつとめる稗田阿求朗・通称あきゅろーもまた、プロの注目を集める人物だった。 あきゅろーのバッティングセンスは恐ろしいほどで、1年生ながら県大会では打率9割という驚愕の成績を残している。 まさにゆっくりを打つために生まれてきた、ゆ球の申し子なのである。 そんな2人の対決は、球場を大いに沸かせていた。 この日の対戦成績はここまでで1安打2三振。 試合は9回裏を向かえ2-1でわずかながら東方義塾がリードしている。 幻想学園は あきゅろー以外の選手は、魔球"ゆっくる"に対しほぼ手も足も出ず、あきゅろーの出塁をきっかけにどうにか1点をもぎ取ったという状態だった。 迎えた9回裏、1アウトを取った後、虐待お兄さんは痛恨のフォアゆっくりを出してしまう。 虐待お兄さんはその疲れからか、ゆっくりを握る手がつい震えてしまっていた。 投球直前に発情してしまったゆっくりは、謎の液体を分泌して、虐待お兄さんの投球コントロールに悪影響を及ぼしてしまったのだ。 9回裏で1点差。1アウトランナー1塁。 迎えるバッターは、あきゅろーである。 『大丈夫、今日はこっちが押してる。』 虐待お兄さんは心の中でつぶやく。 あきゅろーだけを警戒するのであれば敬遠という手もあるのだが、1アウト1・2塁ではあきゅろー以外の選手相手でも失点の恐れがある。 間近に向かえようとしている自らのスタミナの限界を考えると、同点も避けたい状況であった。 次の投球を控えて、虐待お兄さんは儀式を行う。 自身の心を落ち着けるために、ボールに向かって独り言をつぶやくのである。 「もし打たれたら、お前の家族全員バットで100叩きだからな!」 ……自身の心を落ち着けるための儀式なんだってば。 「あかちゃんはだめええええええ!!」 そう叫ぶゆっくりを握り、魔球”ゆっくる”を投じる。 ゼロ回転のゆっくりは、どうにか あきゅろーのバットを逃れようとキャッチャーミットに逃げ込む。わずかに届かず空を切るバット。 ストライク。 キャッチャーミットに辿り着いたゆっくりは興奮気味に語る。 「ゆ! いますっごい! すっごいかぜきたよ、おにーさん!」 先ほどまで泣いていたのが嘘のように、楽しそうである。 続いての投球。外角低めのストレート。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」高速回転するゆっくりは空中制御などできるわけもなく、真っ直ぐにキャッチャーミットに吸い込まれていく。見逃し。 ツーストライク。 「ゆ、おにーさん……きぼぢわるいよぉぉお……」 イケメンキャッチャーは構わず虐待お兄さんにボールを投げ返す。 あと1球。あきゅろーさえ抑えれば何とでもなる。 虐待お兄さんはその魔球に絶対の自信を持っていた。 この大会、優勝してプロに行く。 その野望が虐待お兄さんの疲れきった身体を、再度燃えさせた。 観衆が固唾を飲んで見守る次の投球。 球種はもちろん"ゆっくる"だ。 セットポジションから投じた1球。 『ゆゆ、おにーさんのばっとなんてあたらないよ! ゆっくりからぶってね!』 とばかりに見下した表情で、ゼロ回転で迫るゆっくり。 その表情を目にした瞬間、あきゅろーの中の何かが弾けた。 「ゆべぇっ!」 避ける暇すらないスピードのバットスイングがゆっくりを襲う。 ゆっくりの急所である顔面の中央を打ち抜く、完全なるジャストミート。 元が球体状の物とは思えぬほどひしゃげる、ゆっくりれいむ。 次の瞬間にそれだとわかるほどの、文句の付け所の無いホームランであった。 ガックリと膝を突く虐待お兄さん。 「なんでごんなごどずるのおおおおおおお!!?」 ゆっくりはそのままバックスクリーンに直撃した。 試合は2-3で幻想学園のサヨナラ勝利。 虐待お兄さんの高校ゆ球生活は終わった。 人目をはばからずに涙を流し、マウンドの餡子を袋に詰めていく虐待お兄さん。 その様子を見て、少し申し訳なさそうな表情を見せながらダイヤモンドを回るあきゅろー。 あきゅろーも、虐待お兄さんには何か通じる所を感じていたのであろう。 あきゅろーは その後審判と係員に頼み込んで、ホームランとなったゆっくりを回収した。 バックスクリーンに落ちていたそれには、まだ息があったのだ。 最初の強化ゆっくりを丹念に作り上げた、職人達の成せる業である。 あきゅろーは 球場を後にしようとする虐待お兄さんに声をかける。 「あの……これ、使いますよね?」 そういってホームランゆっくりを手渡すあきゅろー。 「ありがとう、助かるよ。よかったら一緒にくるかい?」すでに心が通じ合ってることを理解する虐待お兄さん。 その手には係員に無理を言って譲ってもらった、先ほどのホームランゆっくりの家族達を詰めた箱がある。そう、虐待お兄さんは有言実行なのである。 「是非お供させてください。よかったら、妹も同行させてよろしいでしょうか?」うれしそうに応える あきゅろー。 そこに勝者と敗者の壁など無い。 ゆ球を通じて、心の交流を果たした2人の球児達の、心温まる風景であった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4766.html
いままで書いたもの とかいはコーディネイター 植物型ゆっくり 魔理沙とゆっくり~邂逅篇~ 取替えられた子 お前なんかドスじゃない ばーさすちれーでん ねるねるねるゆ ゆっくりを飼うって難しい 道を歩いていると、目の前にいきなり一匹のゆっくりれいむが飛び出 してきた。 「ゆっくりしていってね!」 「断る」 俺は迷わずそいつを蹴り飛ばし、そそくさと家に帰った。 れいむはゆっくりしていってねと言ったのにゆっくりしてもらえない どころか蹴り飛ばされて自分がゆっくりできなくなったので草葉の陰 で泣いた。 それから一週間。 俺はまたあの時の道を歩いていた。 すると、目の前に一匹のゆっくりれいむが飛び出してきた。 「ゆっくりまっ」 「断る」 喋っている途中のれいむの口目掛けて爪先をねじ込み、そのまま何度 か爪先を持ち上げたり勢い良く地面に振り下ろしたりしてから適当な 方向へ投げ捨てる。 れいむはゆべっとかゆ゛っゆ゛っとか呻きながら白目で口から泡など 吐いて痙攣していた。俺はそれを見届けると、れいむが通行の邪魔に ならないよう道の脇にそっとどけてそのまま家に帰ろうとする。が、 やけに足首が重いような気がして(気のせいかと思ってしばらくその まま歩いてたが、やはり重い)見てみると、まるで地面を引き摺られ てきたような哀れな姿になったれいむが靴紐に必死にしがみついてい た。 「ゆ゛……ゆ゛っぐり……ま゛っでね……」 「あ、あぁ……」 その地獄から響き渡るような声に俺はつい返事をしてしまう。 すると、れいむは急に元気に立ち上がった。 「ゆふふ……れいむはこのまえゆっくりしてくれなかったおにいさん をゆっくりさせるためにきびしいしゅぎょーをつんできたんだよ! ちからづくでゆっくりさせてあげるからかくごしてね!」 れいむはそう言って、きっとこちらを睨みつけてきた。 そして、俺は…… 「……………………………………………………………………この前?」 「どぼじでおぼえでないのー?!」 全く身に覚えがないのでとりあえず困っておいた。 れいむは泣いた。自分はずっとお兄さんの事を考えて過ごしてきたの に、お兄さんはれいむの事などどうでもよかったのだ。 お兄さんはそんなれいむを見かねて、若干申し訳なさそうな表情を浮 かべる。 「いやぁなんかスマン。全く覚えてないけど。今日は別に急いでない からゆっくりしてやってもいいぞ」 お兄さんからの提案。 ゆっくりしてないお兄さんからの完全降伏。これを受けてれいむは。 「どぼじでぞんなごどいうのー?!」 泣いた。 そしてそのまま続ける。 「それじゃせっかうのしゅぎょーがむだになっぢゃうでじょー?!」 「俺にどうしろと」 若干目的を見失っている感のあるれいむにお兄さんは言う。れいむは 器用にもみあげを動かして涙を拭うと、お兄さんを見上げて告げた。 「れいむとせいせいどーどーしょうぶしてね! れいむがかったらゆ っくりしてもらうよ!」 「……まぁ別にいいけど死んでも恨むなよ?」 所詮はただの饅頭であるれいむを労わりそう言ってきた。しかし、そ のような言葉に恐れるれいむではない。 「ゆふふ、りょうてりょうあしへしおってでもゆっくりしてもらうっ てばよ!」 「そんな状態じゃゆっくりできねーよ」 「うるさいよ! じゃあいくよ!」 そして闘いが始まった。 「ゆふふ、これがれいむのひっさつわざだよ! ぶんしんのじゅつ!」 れいむが叫ぶと、突如れいむの姿がゆっくりしてない速度で動き始め やがて残像が見えるほどになる。しかも、その残像は少しずつはっき りとした輪郭を持ち始め、とうとう元のれいむと同じ姿を持って地面 に立ったではないか。 4つに増えたれいむ達は揃って声を上げた。 「「「「これじゃどれがれいむかわからないでしょ! ゆっくりこう さんしてね!」」」」 「じゃあとりあえず一番右端から」 俺はなんとなく選んだそいつに軽くケリを入れてみる。 「ゆびぇっ?!」 そいつは潰れた饅頭のような悲鳴を上げると勢いよく後方に吹っ飛び ボールのようにぽよんぽよんと弾むと太い木にぶつかり、また潰れた 饅頭のような悲鳴を上げて止まった。 その様子を見て、残った三匹のれいむは薄笑いを浮かべて叫ぶ。 「「「ひっかかったね! そっちはほんたいだよ!」」」 「本体がやられちゃ……駄目なんじゃないか?」 そう聞くと、三匹の分身は揃って小首をかしげ、「何を言ってるんだ こいつ」みたいな顔をする。 「おにいさんのいうとおりだよ! ぶんしんははやくたたかってね!」 と、その間にずりずりと元の位置まで這ってきた本体が声を上げた。 三匹の分身は無様な本体の姿を一度見下ろし、お互いの顔を見合わせ て相談を始めた。 「だれからいく?」 「どうしよう」 「じゃあれいむがいくよ」 「いやいやここはれいむが」 「でもあえてれいむがいくよ」 「れいむがいくって」 「ぎゃくにれいむが」 「やっぱりれいむが」 誰かが声を上げると他の誰かが志願し、それを見たほかの誰かがさら に立候補する。 いつまでも終わらない議論。それを見ていた本体は憤り声を上げた。 「なにしてるの! ぷんぷん! こうなったられいむがいくよ!」 「「「どうぞどうぞ」」」 分身たちはこれ以上ないほど息のあった声を上げた。 そして本体のれいむは不敵な笑みを浮かべながらこちらに向かって飛 びかかってきた。 「おにいさんはゆっくりしたれいむにゆっくりやられてね!」 思い切り跳ね上がるれいむ。その位置は丁度俺の右拳の延長線上。 俺は躊躇わず拳を打ち込んだ。 打ち下ろし気味の右拳は容赦なくれいむを地面に叩きつけ、スーパー ボールよろしくれいむを上空へと跳ね上げた。 およそ3メートルほど。その高さから落ちながられいむは叫ぶ。 「どぼじでごうなるのーーーぉんぶ?!」 そして顔面から地面にぶつかり、再度潰れた饅頭のような声を上げた。 戦場がしーんと静まり返る。この隙に攻撃すればもう終わりなのだが、 そういうのはオサレではないしなんだか悪い事をしてるみたいな気分 になってきたので控えておく。 しばらくして、れいむが起き上がって言った。涙を滝のように流しな がら。 「でいぶいだいのもうやだ! づぎごぞぶんじんがいっでね!」 そしてぽよんぽよんと分身たちの後ろに隠れようとする。 集まっていた分身たちはサッと別れ、三方から本体れいむを取り囲む。 「だいじょうぶ! つぎこそかてるよ!」 「もーいっかい! もーいっかい!」 「ほんたいさんのちょっといいとこみてみたーい!」 そして、見事なコンビネーションで本体れいむをおだて始めた。 「ゆ~、じゃあもういっかいだけだからね!」 「「「ゆわーい」」」 普段褒められ慣れていないれいむは棒読みくさいその言葉にあっさり と乗せられ、まだ涙の跡が残る顔をこちらに向けて跳ねてきた。 「れいむにぶんしんたちのまえでいいかっこさせてね!」 そう言って渾身の体当たりを繰り出してくる。 その姿が余りに痛々しくて、俺は右拳を入れてやらなくちゃいけない 所をつい平手でべちんと頬を引っぱたいてしまう。 「ゆべしっ!!」 横から衝撃を受けたれいむは、綺麗なきりもみ回転を疲労しつつ頭か ら地面に突き刺さった。 まさか平手でもそこまでのダメージを負うとは思わなかった俺は、上 下逆さで地面に横たわるれいむにそっと手を伸ばす。 「ごべんなざいーー! もうでいぶのまげだがらいだいごどじないで ねーーー?!」 と、それを追撃だと思い込んだれいむは大声で泣きながら降参の意を 示した。 大声で泣き続けるれいむを前に、すっかり困った俺は残っている分身 たちに目を向けた。 分身たちはにたにたと笑っていた。 「ゆふふ、ほんたいがやられたようだね」 「ほんたいはれいむたちのなかでもいちばんのこもの」 「にんげんさんごときにやられるとはれいむのつらよごしだよ」 「「「おぉよわいよわい」」」 先ほどまでの嫌らしい笑みから一点、大声で笑い始める分身たち。本 体のれいむはその場で(上下逆さで動けないため)声を上げた。 「どぼじでぞんなひどいごどいうのー?!」 「うるさいよ!」 「うごけないほんたいなどひつようないよ!」 「ゆっくりしね!」 そう言って分身たちは揃って上下逆さの本体の上に飛び乗り、本体れ いむを押し潰した。 「ゆぴぃっ!」 「「「きたないはなびだね!」」」 三匹が縦に重なりまるでトーテムポールのような形になってそう言う 分身たち。こいつらどこの戦闘民族なのだろうか。 俺は、いい顔でそこに佇むトーテムポールに向かってささいな疑問を 投げかけてみた。 「お前ら、分身なのに本体なしで存在できるのか?」 「「「…………」」」 それを聞いた分身たちは、目を白黒させる。 そして、揃ってこう叫んだ。 「「「うっかりー!」」」 分身たちが叫ぶと同時に、一番下の分身の体が潰れた本体れいむの餡 子の中へずるずると引きずり込まれだした。きっと母なる海へと帰る のだろう。 涙目になった分身達は、引きずり込まれながらも俺に向かって言葉を 投げかける。 「これでかったとおもわないでね」 一匹目が完全に飲まれる。 「たとえれいむがきえてもひとのこころにゆっくりしてないこころが あるかぎり」 二匹目中ほどまでが飲まれる。 「だいにだいさんのれいむがおにいさんのまえにあらわれるよ」 三匹目の足が飲まれ始める。 「そのときまでせいぜい」 そして、三匹目の頭が完全に飲まれるかどうか、という所で。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 声を揃えてそう言うと完全に分身達はこの世から消え、後には一匹分 のれいむの死体だけが残った。 俺は、あの分身たちの言葉を思い出す。 『ひとのこころにゆっくりしてないこころがあるかぎり――』 人がゆっくりするまで、ゆっくりという哀しい存在は生まれ続ける。 人はもっとゆっくりするべきだ。それを教えるため、ゆっくりは生ま れ、そして死んでいくのだろう。 俺は、もうれいむのような哀しい存在が生まれないよう願いながら、 言った。 「さて、余計な時間を食ったし急いで帰るか」 おわり このSSに感想をつける